2017年 京都大学 数学 理系 第 6 問を解こう

夏休みも終わりに近づき本格的な受験シーズンに突入しようとしています。
ここからは実戦的な演習に努めたいところです。

そこで演習力強化のため,東大よりも難し目の出題をしている京都大学の問題を解いていきます。
今回は2017年 京都大学 数学 理系 第 6 問を解いていきましょう。
問題はこちら


n自然数とする.n 個の箱すべてに,\fbox{1},\ \fbox{2},\ \fbox{3},\ \fbox{4},\ \fbox{5}5 種類のカードがそれぞれ 1 枚ずつ計 5 枚入っている.各々の箱から 1 枚ずつカードを取り出し,取り出した順の左から並べて n 桁の数 X を作る.このとき,X3 で割り切れる確率を求めよ.
( 2017 京都大学 理系 第 6 問 )

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思考過程

箱からカードを取り出す試行は独立です。・・・①

n 桁の数 X10 進数で表された数です。

X3 で割り切れるのは各桁の数の和が 3 の倍数となるとき・・・(☆)

です。

カードを 3 で割った余りで分類すると

01
12
22

ですから

1つの箱からカードを取り出したとき

3 で割った余りが 0 となるカードが出る確率:\displaystyle \frac{1}{5}

3 で割った余りが 1 となるカードが出る確率:\displaystyle \frac{2}{5}

3 で割った余りが 2 となるカードが出る確率:\displaystyle \frac{2}{5}

です。・・・②

n 個の箱からカードを取り出したとき
X3 で割った余りは 0\ , 1\ , 2
3 状態しかありません。

X3 で割った余りが 0 となる確率: p_n

X3 で割った余りが 1 となる確率: q_n

X3 で割った余りが 2 となる確率: r_n

とします。

n+1 個の箱からカードを取り出したとき
①,②,(☆)より

(p_{n+1}\ ,\ q_{n+1}\ ,\ r_{n+1})(p_n\ ,\ q_n\ ,\ r_n) との間に
遷移関係が現れます。

表1
f:id:tarumaru:20170830013857p:plain

よって

\displaystyle p_{n+1}=\frac{1}{5}p_n+\frac{2}{5}q_n+\frac{2}{5}r_n・・・③

\displaystyle q_{n+1}=\frac{2}{5}p_n+\frac{1}{5}q_n+\frac{2}{5}r_n・・・④

\displaystyle r_{n+1}=\frac{2}{5}p_n+\frac{2}{5}q_n+\frac{1}{5}r_n・・・⑤

p_{n+1}+q_{n+1}+r_{n+1}=1・・・⑥

p_n+q_n+r_n=1・・・⑦

③より

\displaystyle p_{n+1}=\frac{1}{5}p_n+\frac{2}{5}(q_n+r_n)\\\displaystyle =\frac{1}{5}p_n+\frac{2}{5}(1-p_n) \ \ (∵⑦)\\\displaystyle =-\frac{1}{5}p_n+\frac{2}{5}

この漸化式より

\displaystyle p_{n+1}-\frac{1}{3}=-\frac{1}{5}(p_n-\frac{1}{3})

\displaystyle (p_n-\frac{1}{3})=(p_1-\frac{1}{3})(-\frac{1}{5})^{n-1}

\displaystyle p_1=\frac{1}{5} ですから

\displaystyle (p_n-\frac{1}{3})=(\frac{1}{5}-\frac{1}{3})(-\frac{1}{5})^{n-1}\\\displaystyle =-\frac{2}{15}(-\frac{1}{5})^{n-1}

\displaystyle p_n=\frac{2}{3}(-\frac{1}{5})^n+\frac{1}{3}

これで問題が解けました。

解答の骨格

1. X3 で割った余りで分類してその確率を設定する

2. n+1n の状態をつなぐ遷移関係から1.の確率の漸化式を導く

3. 漸化式を解く

解答例

n 桁の数を X_n とする

X_n3 で割った余りが 0 となる事象を P_n ,その確率を p_n

X_n3 で割った余りが 1 となる事象を Q_n ,その確率を q_n

X_n3 で割った余りが 2 となる事象を R_n ,その確率を r_n

とする

n 番の箱が n 桁目の数を決めるものとする

n 桁の数 X_n3 で割り切れるのは各桁の数の和が 3 の倍数となるとき・・・(☆)
である

1つの箱からカードを1枚取り出すとき

3 で割った余りが 0 となるカードが取り出される確率:\displaystyle \frac{1}{5}

3 で割った余りが 1 となるカードが取り出される確率:\displaystyle \frac{2}{5}

3 で割った余りが 2 となるカードが取り出される確率:\displaystyle \frac{2}{5}

(☆)より
P_{n+1} となるのは

P_n のとき,n+1 番の箱から 3 で割った余りが 0 となるカードが取り出される

Q_n のとき,n+1 番の箱から 3 で割った余りが 2 となるカードが取り出される

R_n のとき,n+1 番の箱から 3 で割った余りが 1 となるカードが取り出される

の①+②+③の場合だから

\displaystyle p_{n+1}=\frac{1}{5}p_n+\frac{2}{5}q_n+\frac{2}{5}r_n

p_n+q_n+r_n=1 より

\displaystyle p_{n+1}=\frac{1}{5}p_n+\frac{2}{5}(q_n+r_n)\\\displaystyle =\frac{1}{5}p_n+\frac{2}{5}(1-p_n) \\\displaystyle =-\frac{1}{5}p_n+\frac{2}{5}

この漸化式より

\displaystyle p_{n+1}-\frac{1}{3}=-\frac{1}{5}(p_n-\frac{1}{3})

数列 \displaystyle {p_n-\frac{1}{3}} は初項 \displaystyle p_1-\frac{1}{3} ,公比 \displaystyle \frac{1}{5}等比数列だから

\displaystyle (p_n-\frac{1}{3})=(p_1-\frac{1}{3})(-\frac{1}{5})^{n-1}

\displaystyle p_1=\frac{1}{5} より

\displaystyle (p_n-\frac{1}{3})=(\frac{1}{5}-\frac{1}{3})(-\frac{1}{5})^{n-1}\\\displaystyle =-\frac{2}{15}(-\frac{1}{5})^{n-1}

\displaystyle  p_n=\frac{2}{3}(-\frac{1}{5})^n+\frac{1}{3}

よって求める確率は

\displaystyle \frac{2}{3}(-\frac{1}{5})^n+\frac{1}{3}・・・(答)

まとめポイント

・「 X_n3 で割り切れる⇔各桁の数の和が 3 の倍数となる」は合同式を用いるとすぐにわかります。

X_n の各桁の数を a_n とすると
10≡1 \ \ (\mod3\ ) だから

X_n=a_n\cdot10^n+a_{n-1}\cdot10^{n-1}+\cdots+a_1\cdot10+a_0
≡a_n+a_{n-1}+\cdots+a_1+a_0 \ \ (\mod3\ )

よって

X_n≡0 \ \ (\mod3\ )⇔a_n+a_{n-1}+\cdots+a_1+a_0≡0 \ \ (\mod3\ )

となり「」が示されます。

X_n3 で割った余りは 0\ , 1\ , 23状態しかありません

余りを考えることで一般の n という数を相手にするのではなく 3 という有限個の場合を考えることに帰着させます

X_n≡0 \ \ (\mod3\ )⇔a_n+a_{n-1}+\cdots+a_1+a_0≡0 \ \ (\mod3\ )

からわかるようにカードの数字そのものよりもその数字を 3 で割った余りがどうなるかが本質的です
1\ , 2\ , 3\ , 4\ , 5 といった具合にカードの具体的な数字を考えるのは煩わしく混乱の元なので余りが同じグループに分けておきましょう

最後に

確率漸化式の基本問題です。
今年の京大理系数学で最も易しい問題です。
遅くとも 20 分,できれば 15 分で完答したいです。

大受験生なら思考過程に書かれた程度の発想は問題を読んだ瞬間に出てきて欲しいところです。

本問で一番マズいのは遷移関係に気付かず確率を場合の数の比で求めようとすることです。

n 個の箱から取り出されるカードの出方は 5^n 通り。このうち、X_n3 の倍数となるカードの出方は・・・???」

と考えて思考がフリーズする人がいます。
確率ときたらなんでもかんでも場合の数の比で求めようとする人がいるので気をつけましょう。