2017年 京都大学 数学 理系 第 3 問 ( 文系 第 4 問 ) を解こう

引き続き今年の京都大学の問題を解いていきます。
今回は 理系 第 3 問 ( 文系 第 4 問 ) です。

問題はこちら

p\ ,\ q自然数\alpha\ ,\ \beta

\displaystyle \tan\alpha=\frac{1}{p}\ ,\ \tan\beta=\frac{1}{q}

を満たす実数とする.

このとき

\tan(\ \alpha+2\beta\ )=2

を満たす p\ ,\ q の組 ( p\ ,\ q ) をすべて求めよ.

( 2017 京都大学 数学 理系 第 3 問 )


(~このとき までは同じ)次の問いに答えよ

( 1 ) 次の条件

  ( A )    \tan(\ \alpha+2\beta\ )=2

を満たす p\ ,\ q の組 ( p\ ,\ q ) のうち,q≦3 であるものをすべて求めよ.


( 2 ) 条件 ( A ) を満たす p\ ,\ q の組 ( p\ ,\ q ) のうちで,q\ >3 であるものは存在しないことを示せ.

( 2017 京都大学 数学 文系 第 4 問 )


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思考過程

題意を満たす p\ ,\ q の組をすべて求めよとのことですから
α\ ,\ β の式から p\ ,\ q の式にするようにしましょう。

α\ ,\ 2β となって αβ は対等ではありません。

まずは \tan2β を計算してみましょう。

\displaystyle \tan 2β=\frac{\tan β+\tan β}{1-\tan ^2β}

\tan^2β=1 のとき \tan2β が定義できなくなるのでまずいです。

\displaystyle \tanβ=\frac{1}{q}>0 より

\tanβ=1 となる β およびそのときの q が除外されます。

\displaystyle \tanβ=1⇔β=\frac{π}{4}+nπ ( n は整数)

この β のとき、q\displaystyle \tanβ=\frac{1}{q} より 1 となります。

よって q=1 が除外されます。

以下、\displaystyle β\neq\frac{π}{4}+nπ のもとで考えます。

\tan2β の計算に戻ると

\displaystyle \tan2β=\frac{2\tanβ}{1-\tan^2β}\\\displaystyle =\frac{2(\frac{1}{q})}{1-(\frac{1}{q})^2}\\\displaystyle =\frac{2q}{q^2-1}

となるから

\displaystyle \tan(α+2β)=\frac{\tanα+\tan2β}{1-\tanα\tan2β}\\\displaystyle =\frac{\frac{1}{p}+\frac{2q}{q^2-1}}{1-\frac{1}{p}\cdot\frac{2q}{q^2-1}}\\\displaystyle =\frac{q^2+2pq-1}{pq^2-p-2q}


\tan(α+2β)=2

ですから

\displaystyle \frac{q^2+2pq-1}{pq^2-p-2q}=2\\⇔q^2+2pq-1=2(pq^2-p-2q)・・・①

右辺は偶数です

左辺は -1 を右辺に移項すると q でくくって積の形にできます。

q(q+2p)=2(pq^2-p-2q)+1

( 自然数 )( 自然数 )=( 奇数 )

の形となりました。

2つの自然数の積が奇数となるときその自然数は2つとも奇数です。

よって q が奇数であることがわかります。

しかし q が奇数であるというだけではたいして q を絞り込む情報となりません。
( 奇数は無限個あります )

他に p\ ,\ q を絞り込む情報はないでしょうか。

式①をみると両辺の p は1次です。
p について解けそうです。
式①より

2p(q^2-q-1)=q^2+4q-1

q^2-q-1=0 の解は \displaystyle q=\frac{1\pm\sqrt{5}}{2} ですので q^2-q-1=0 を満たす自然数 q は存在しません。
よって

\displaystyle 2p=1+\frac{5q}{q^2-q-1}・・・①’

左辺は整数ですから右辺も整数でなければいけません。
整数にならない可能性を秘めているのは \displaystyle \frac{5q}{q^2-q-1} ですからこの部分が整数になる条件を考えます。

分数式が 0 以外の整数となるには

( 分子 )≧( 分母 )

となることが必要です。

( 分子 )<( 分母 )

なら分数式の絶対値は 1 より小さくなり 0 以外の整数をとり得なくなりますが分数式が 0 となるのは分子が 0 のときだけですから結局このとき分数式は整数となりません。

よって

5q≧q^2-q-1・・・②

が必要です。

②⇔q^2-6q-1≦0

\{q-(3-\sqrt{10})\}\{q-(3+\sqrt{10})\}≦0

3-\sqrt{10}≦q≦3+\sqrt{10}

3<\sqrt{10}<4⇔6<3+\sqrt{10}<7q≧2 より

自然数 q の取りうる範囲は

2≦q≦6

となり,さらに q が奇数であることを考えると q

3 または 5 です.

あとは p\ ,\ q が満たすべき式である①’に3 または 5 を代入して十分性を確認すれば終わりです.

1^\circ q=3 のとき①’より

2p=1+3 となって p=2

2^\circ q=5 のとき①’より

\displaystyle 2p=1+\frac{25}{19} となって不適

よって題意の条件を満たす p\ ,\ q の組は

( p\ ,\ q )=( 2\ ,\ 3 )

のみです.これで問題が解けました.

解答の骨格

1.\displaystyle β=\frac{π}{4}+nπが不適なことを示し q=1 を除外し q≧2 を導く

2.\tan(\ \alpha+2\beta\ )=2 から 2p(q^2-q-1)=q^2+4q-1 とし q が奇数であることを導く

3.\displaystyle 2p=1+\frac{5q}{q^2-q-1} とし右辺が整数となる条件から q の範囲を絞り q3 または 5 となることを示す

4.q=3 または q=5 の十分性を確認し,求める組が ( p\ ,\ q )=( 2\ ,\ 3 ) しかないことを示す

解答例

\displaystyle \tan 2β=\frac{\tan β+\tan β}{1-\tan ^2β}

\displaystyle β=\frac{π}{4}+nπ ( n は整数 ) のとき

\tanβ=1 となり q=1

このとき,\displaystyle \tan(α+2β)=\tan(α+\frac{\pi}{2}+2n\pi)\\=\displaystyle -\frac{1}{\tan{α}}\\=-p

p自然数だから -p<0 となり \tan(α+2β)=2 に反するため不適.

よって q\neq1q自然数だから q≧2

q≧2のとき

\tan(α+2β)=2\\\displaystyle ⇔\frac{\tanα+\tan2β}{1-\tanα\tan2β}=2・・・①


\displaystyle \tanβ=\frac{1}{q} より

\displaystyle \tan 2β=\frac{2q}{q^2-1}

これと \displaystyle \tanα=\frac{1}{p} を①に代入して

q^2+2pq-1=2(pq^2-p-2q)

2p(q^2-q-1)=q^2+4q-1・・・②

②の左辺は偶数 ここで法を 2 とすると右辺は

q≡0 のとき,q^2+4q-1≡-1≡1

q≡1 のとき,q^2+4q-1≡4≡0

だから q は奇数である

q^2-q-1=0 の解は \displaystyle q=\frac{1\pm\sqrt{5}}{2} だから

q^2-q-1=0 を満たす自然数 q は存在しない

よって②より

\displaystyle 2p=\frac{q^2+4q-1}{q^2-q-1}

\displaystyle 2p=1+\frac{5q}{q^2-q-1}・・・③

③の左辺は整数だから右辺の \displaystyle \frac{5q}{q^2-q-1} が整数となることが必要

その条件は

5q≧q^2-q-1・・・④

④⇔q^2-6q-1≦0

3-\sqrt{10}≦q≦3+\sqrt{10}

3<\sqrt{10}<4⇔6<3+\sqrt{10}<7q≧2 より

自然数 q の取りうる範囲は

2≦q≦6

となり,さらに q は奇数であるから q

3 または 5

1^\circ q=3 のとき③より

2p=1+3 となって p=2

2^\circ q=5 のとき③より

\displaystyle 2p=1+\frac{25}{19} となって不適

よって求める自然数 p\ ,\ q の組は

( p\ ,\ q )=( 2\ ,\ 3 )・・・(答)

まとめポイント

\tan(α+2β) を加法定理を用いて展開するときに \tan2β の値が必要となります.

β の値によって \tan2β が定義されない場合があるのでそのような不適当な β およびそのときの q の値を除外する必要があります.

・解答例では思考過程と異なり合同式を用いて q は奇数であることを示しておきました.

思考過程のような式変形に気付かなかった場合でもこのようにして q は奇数であることを示すことができます.

\displaystyle 2p=\frac{q^2+4q-1}{q^2-q-1}\displaystyle 2p=1+\frac{5q}{q^2-q-1} と式変形して右辺が整数となる条件を考えることが本問最大のポイントです.

まず,右辺の分数式の分子の次数を分母よりも小さくするため,分子を分母で割ります.

こうすることで右辺が整数となるためのより強い評価式を得ることになります.

( q^2+4q-1≧q^2-q-1 とすると q≧0 になることしかわかりません)

次に,(整数)=(整数)+(分数)の形になるので右辺の(分数)が整数となることが必要になり分数式において条件:(分子)≧(分母)を導きます.

最後にこの条件から文字の範囲が求まるのであとは十分性を確認して終わりです.

最後に

三角関数の加法定理の装飾を施されていますが中身は標準的な整数問題です.

まとめポイントで示した分数式の処理の流れは整数問題の定石ですので必ず身につけるようにしてください.

文系の人は解答例(理系用です)を参考にしてください.本問では ( 1 ) と ( 2 ) を分けないほうが解き易いです.