2017年 京都大学 数学 理系 第 1 問 を解こう

10月に突入し模試シーズンが始まりました。
制限時間内で問題が解けるかを判定する貴重な機会です。
ぜひ、模試を有効活用して本番への予行演習を図りましょう。

引き続き今年の京都大学の問題を解いていきます。
今回は2017年 京都大学 数学 理系 第 1 問 です。

問題はこちら


ω0でない複素数x, y\displaystyle ω+\frac{1}{ω}=x+y\ i を満たす実数とする.

( 1 ) 実数 RR\ >1 を満たす定数とする.ω が絶対値 R複素数全体を動くとき,xy 平面上の点 (\ x\ ,\ y\ ) の軌跡を求めよ.

( 2 ) 実数 α\displaystyle 0<\ α\ <\frac{π}{2} を満たす定数とする.ω偏角 α複素数全体を動くとき,xy 平面上の点 (\ x\ ,\ y\ ) の軌跡を求めよ.

( 2017 京都大学 数学 理系 第 1 問 )


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(1) 思考過程

(\ x\ ,\ y\ )ω の値によって変化します.

変化する ω の表し方としては

Ⅰ.ω=x+y\ i の直交形式

Ⅱ.ω=r\ (\ \cosθ+i\ \sinθ\ )極形式

の2通りがあります.

問題文を読むと ( 1 ) では絶対値,( 2 ) では偏角がそれぞれ定数として与えられているので ω極形式でおくのがよさそうです.

そこで偏角 θ を変数( 0 ≦ θ< 2π )として

ω=R\ (\ \cosθ+i\ \sinθ\ ) とおくと

\displaystyle ω+\frac{1}{ω}=R\ (\ \cosθ+i\ \sinθ\ )+\frac{1}{R}\ \{\ \cos(-θ\ )+i\ \sin(-θ\ )\ \}\]

[tex:\displaystyle =(R+\frac{1}{R})\cosθ+(R-\frac{1}{R})\sinθ

となるから \displaystyle ω+\frac{1}{ω}=x+y\ i より

\displaystyle x=(R+\frac{1}{R})\cosθ・・・①\ ,\ y=(R-\frac{1}{R})\sinθ・・・②

となります.

いま,R は定数ですから θ が変化することで x\ (\ y\ ) も変化します.

逆に言えば①(②)において x\ (\ y\ ) の値を定めたときに

θ が存在すれば x\ (\ y\ ) はその値をとり

θ が存在しなければ x\ (\ y\ ) はその値をとりません.

θ の値が1つ定まると単位円上の点 ( \cosθ\ ,\ \sinθ ) が1つ定まります.

単位円は半径 1 の円ですから \cos^2θ+\sin^2θ=1 が成立します.

そこで

θが存在する」⇔「 \cos^2θ+\sin^2θ=1 が成立する」

ですから①,②をそれぞれ,\cosθ\sinθ について解いて \cos^2θ+\sin^2θ=1 に代入した式が θ\ の存在条件となります.

R>1 より \displaystyle R+\frac{1}{R}\neq0\ ,\ R-\frac{1}{R}\neq0 ですから①,②より

\displaystyle \cosθ=\frac{Rx}{R^2+1}\ ,\ \sinθ=\frac{Ry}{R^2-1}\cos^2θ+\sin^2θ=1 に代入すると

\displaystyle \frac{R^2x^2}{(R^2+1)^2}+\frac{R^2y^2}{(R^2+1)^2}=1・・・(☆)

この式こそ θ の存在条件でありこの式を満たす ( x\ ,\ y ) は①,②より自己を規定するパラメータの存在が保証されています.

よって θ が変化するとき,( x\ ,\ y ) の動く範囲は(☆)の方程式が描く図形です.

x\ ,\ y の2次式で x\ ,\ y の項が同符号ですから楕円になると予想されます.左辺の分母・分子を R^2 で割ると

\displaystyle \frac{x^2}{\left( R+\displaystyle \frac{1}{R}\right)^2}+\frac{y^2}{\left( R-\displaystyle \frac{1}{R}\right)^2}=1

予想通り楕円の方程式が得られました.

よって求める点 (\ x\ ,\ y\ ) の軌跡は楕円

\displaystyle \frac{x^2}{\left( R+\displaystyle \frac{1}{R}\right)^2}+\frac{y^2}{\left( R-\displaystyle \frac{1}{R}\right)^2}=1

です.これで問題が解けました.

(1) 解答の骨格

1.偏角を変数にして ω極形式で表す

2.\displaystyle ω+\frac{1}{ω}=x+y\ i から複素数の相等より x\ ,\ y についての式を得る

3.2.で得た式を \cosθ\ ,\ \sinθ について解く

4.3.で得た \cosθ\ ,\ \sinθ\cos^2θ+\sin^2θ=1 に代入する

5.4.で得た式を楕円の方程式に整える

(1) 解答例

ω=R\ (\ \cosθ+i\ \sinθ\ ) とおくと

\displaystyle ω+\frac{1}{ω}=(R+\frac{1}{R})\cosθ+(R-\frac{1}{R})\sinθ

となるから \displaystyle ω+\frac{1}{ω}=x+y\ i より

\displaystyle x=(R+\frac{1}{R})\cosθ・・・①\ ,\ y=(R-\frac{1}{R})\sinθ・・・②

R>1 より \displaystyle R+\frac{1}{R}\neq0\ ,\ R-\frac{1}{R}\neq0 だから①,②より

\displaystyle \cosθ=\frac{Rx}{R^2+1}\ ,\ \sinθ=\frac{Ry}{R^2-1}

\cos^2θ+\sin^2θ=1に代入して

\displaystyle \frac{x^2}{\left( R+\displaystyle \frac{1}{R}\right)^2}+\frac{y^2}{\left( R-\displaystyle \frac{1}{R}\right)^2}=1

よって求める点 (\ x\ ,\ y\ ) の軌跡は楕円

\displaystyle \frac{x^2}{\left( R+\displaystyle \frac{1}{R}\right)^2}+\frac{y^2}{\left( R-\displaystyle \frac{1}{R}\right)^2}=1・・・(答)

(1) まとめポイント

・軌跡を求める定石として「動点を規定するパラメータの存在条件を求める」があります.

まずは何が変数(パラメータ)になるかをきちんと押さえましょう.

本問では ω の絶対値 R は定数ですから ω偏角が変数となります.
偏角が定数なら「 ω が・・・複素数の全体を動く」とは言えませんよね)

偏角が変数となることを押さえたら次は変数の存在条件を求めます.

三角関数の一般角 θ の存在条件が \cos^2θ+\sin^2θ=1 になることは三角関数の定義から明らかでしょう.

三角関数がパラメータに関与するときは常に \cos^2θ+\sin^2θ=1 に注意を払ってください.

意外に忘れる人が多いです.

・「軌跡を求めよ」と問われたら軌跡の概形を答えるだけでなく軌跡の方程式を答えることが要求されます.

単に「楕円」と答えることのないようにしましょう.

なお,「図示せよ」という指示はないので軌跡の概形を描く必要はありません.

(2) 思考過程

( 1 ) と異なり,今度は偏角 α が定数で複素平面の原点からの距離を表す r が変数です.

( 1 ) と同様にして変数の存在条件を求めていきましょう.

まず,忘れてならないのは 

r\ >0・・・③

です.

(1) 解答例の①,②において α→r\ , \ θ→α とすると

\displaystyle x=(r+\frac{1}{r})\cosα\ ,\ y=(r-\frac{1}{r})\sinα

を得ます.変数は r ですから r について解きましょう.

\displaystyle 0\ <\ α\ <\ \frac{π}{2} より \cosα\neq0\ ,\ \sinα\neq0 ですから

\displaystyle r+\frac{1}{r}=\frac{x}{\cosα}・・・④

\displaystyle r-\frac{1}{r}=\frac{y}{\sinα}・・・⑤

④,⑤をそれぞれ単独で r について解こうとすると r2次方程式を解くハメになるので面倒です.

④,⑤の式を見ると足せば r の1次式になるので簡単になります.そこで④+⑤より

\displaystyle r=\frac{1}{2}\left(\frac{x}{\cosα}+\frac{y}{\sinα}\right)・・・⑥

を得ます.

⑥を④(または⑤)に代入してもよいのですが

④ー⑤からも r の1次式が得られてそれと⑥を連立させたほうが r をより簡単に消去できます.

そこで④ー⑤より

\displaystyle \frac{1}{r}=\frac{1}{2}\left(\frac{x}{\cosα}-\frac{y}{\sinα}\right) ・・・⑦

を得ます.

⑥,⑦の左辺はについて解かれた形になっているので忘れずに③の情報を反映させておきましょう.

⑥,⑦を③に代入して

\displaystyle \frac{x}{\cosα}+\frac{y}{\sinα}\ >\ 0・・・⑥’

\displaystyle \frac{x}{\cosα}-\frac{y}{\sinα}\ >\ 0・・・⑦’

を得ます.

あとは⑥,⑦から r を消去するだけです.⑥と⑦をかけると r を消去できるので

⑥’×⑦’より

\displaystyle 1=\frac{1}{4}\left(\frac{x^2}{\cos^2α}-\frac{y^2}{\sin^2α}\right)・・・⑧

x\ ,\ y の2次式で x\ ,\ y が異符号ですから求める軌跡は双曲線になりそうです.

⑧を整理すると

\displaystyle \frac{x^2}{(\ 2\cosα\ )^2}-\frac{y^2}{(\ 2\sinα\ )^2}=1・・・⑧’

⑧’は ( 2\cosα\ ,\ 0 ) を頂点とする双曲線になりました.

ここまで求めた変数 r の存在条件は⑥’かつ⑦’かつ⑧’です.

よって双曲線⑧’の中でも x\ ≧\ 2\cosα の部分が点 ( x\ ,\ y ) の動きうる部分です.

これで問題が解けました.

(2) 解答の骨格

1.絶対値を変数にして ω極形式で表す

2.\displaystyle ω+\frac{1}{ω}=x+y\ i から複素数の相等より x\ ,\ y についての式を得る

3.r>0 に注意して2.で得た式から r を消去した式を得る

4.3.で得た式を定義域に注意して双曲線の方程式に整える

(2) 解答例

ω=r\ (\ \cosα+i\ \sinα\ ) とおくと

r\ >0・・・③

( 1 ) と同様にして

\displaystyle x=(r+\frac{1}{r})\cosα・・・④\ ,\ y=(r-\frac{1}{r})\sinα・・・⑤

\displaystyle 0\ <\ α\ <\ \frac{π}{2} より \cosα\neq0\ ,\ \sinα\neq0 だから

④,⑤より

\displaystyle r+\frac{1}{r}=\frac{x}{\cosα}・・・④’

\displaystyle r-\frac{1}{r}=\frac{y}{\sinα}・・・⑤’

④’+⑤’より

\displaystyle r=\frac{1}{2}\left(\frac{x}{\cosα}+\frac{y}{\sinα}\right)・・・⑥

④’-⑤’より

\displaystyle \frac{1}{r}=\frac{1}{2}\left(\frac{x}{\cosα}-\frac{y}{\sinα}\right)・・・⑦

r\ >\ 0 より

\displaystyle \frac{x}{\cosα}+\frac{y}{\sinα}\ >\ 0・・・⑥’

\displaystyle \frac{x}{\cosα}-\frac{y}{\sinα}\ >\ 0・・・⑦’

⑥’×⑦’より

\displaystyle 1=\frac{1}{4}\left(\frac{x^2}{cos^2α}-\frac{y^2}{sin^2α}\right)

\displaystyle \frac{x^2}{(\ 2\cosα\ )^2}-\frac{y^2}{(\ 2\sinα\ )^2}=1・・・⑧

⑥’,⑦’,⑧より求める点 (\ x\ ,\ y\ ) の軌跡は双曲線

\displaystyle \frac{x^2}{(\ 2\cosα\ )^2}-\frac{y^2}{(\ 2\sinα\ )^2}=1\ \ (\ x\ ≧\ 2\cosα\ )

(2) まとめポイント

・変数の存在条件をきちんととらえましょう.

ω の絶対値を r としたとき,r\ >0 を忘れてしまう人がいます.

問題文には与えられていないため自分で設定する必要があります.

自明と思える条件はとくに忘れがちなので注意しましょう.

.求める変数 r の存在条件は解答例の式番号を使って説明すると

「③かつ④かつ⑤」です.

これは「③かつ④’かつ⑤’」と同値です.

④+⑤より

\displaystyle r=\frac{1}{2}\left(\frac{x}{\cosα}+\frac{y}{\sinα}\right)・・・⑥’

を得たところで r について解かれたことに安心してこれと③より求める軌跡を

\displaystyle \frac{x}{\cosα}+\frac{y}{\sinα}\ >\ 0

と結論付けて終わりにしてしまう人がいます.

これだと「③かつ⑥」で⑤についての r の条件が考慮されないため不十分です.

正しくは「③かつ⑥かつ⑤」です.

ただ,解答例では「③かつ⑥かつ⑦」としています.これは「③かつ⑥かつ⑤」よりも「③かつ⑥かつ⑦」のほうが⑥×⑦で r が簡単に消せる利点があるためです.

「④’かつ⑤’」⇔「⑥かつ⑦」となっているので同値性は保存されます.

同値性に注意しながら計算が簡単になる式の連立を選択しましょう.

最後に

( 1 ) ( 2 )ともに変数の存在条件を求めることに帰着されます.

( 1 )のように偏角が変数となるときは変数の存在条件が単位円上の点が存在することとなってわかり易いです.

( 2 )のように、絶対値が変数となるときは変数の存在条件である「絶対値>0」( 0 でない複素数とあるから不等号は>です)を忘れないでください.この条件は忘れがちなので注意が必要です.

軌跡の方程式を求める問題では同値性を保つように式を連立する必要があります.同値性が保たれないと動く範囲に過不足が生じるためです.

連立すべき複数の式が現れたときは

・何が求める存在条件の変数(パラメータ)なのかを確認する
・連立する式に現れるすべての変数(パラメータ)を消去する

というステップを連立する式の同値性に注意しながら踏むことが必要です.

(2)はこのような軌跡の定石を学べるのでおすすめの問題です.