夏休み中に基礎力チェック! 2017 センター試験数学ⅡB第 2 問を解こう

夏休みも終盤になりましたが基礎力チェックをしていきましょう。

今回は2017 センター試験数学ⅡB第 2 問です。
問題はこちら
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(1) 思考過程

センター定番の定点を通過する接線を求める問題です.

この手の問題は

1. 接点を設定する
2. 接線の方程式を立てる
3. 2.の方程式に定点の座標を代入して接点の満たす条件式を求める

の流れになります.

本問では定点は P\ (a\ ,2a) です.

接点が (t\ ,t^2+1) と設定されています.

f(x)=x^2+1 とおきます.

接線の方程式は

・接点における微分係数(接点での傾きを表します)

・通過点

がわかれば求まります.

x=t における f(x)微分係数を求めましょう.

f'(x)=2x

ですからx=t における f(x)微分係数

f'(t)=2t

です

傾き m で点 (a\ ,b) を通る直線の方程式は

y=m(x-a)+b

でしたよね.

いまは傾き 2t でC上の点 (t\ ,t^2+1) ですから

y=2t(x-t)+t^2+1\\\ \ =2tx-t^2+1・・・(Ⅰ)

これが (t\ ,t^2+1) における接線の方程式です.

これが P(a\ ,2a) を通るのですから(Ⅰ)の (x\ ,y)(a\ ,2a) を代入して

2a=2ta-t^2+1⇔t^2-2at+2a-1=0・・・(Ⅱ)

(Ⅱ)は点 P を通るときの t が満たすべき条件式です.

つまり(Ⅱ)を満たす t が存在することが点 P を通過する接線が存在する条件です.

(接線の存在条件が接点の存在条件に言い換えられていることに注意してください)

前回も話した通り,ある文字についての存在条件とはその文字について解くことで導かれます.

(Ⅱ)を t について解きましょう.

2次方程式ですから解の公式を使ってもよいのですが(Ⅱ)に t=1 を代入すると(Ⅱ)=0 が簡単に確かめられるので因数分解すると

(Ⅱ)⇔ \{t-(2a-1)\}(t-1)=0

となりますから(Ⅱ)を満たす t

t=2a-1\ ,\ 1

です.

3次以下の多項式関数において

「定点を通る接線の本数」=「定点を通る接線の接点の個数」

が成り立ちます.

2a-1=1⇔a=1 のとき,接点が重複し接線が1本しか存在しないことになるので不適です.

よって接線の本数が2本になるのは接点の個数が2個のときで

a\neq1

です. このとき

t=2a-1\ ,\ 1

の2個の t が(Ⅰ)を満たすことになるのでこの2個の t をそれぞれ(Ⅰ)に代入して

y=(4a-2)x-4a^2+4a・・・①

y=2x

を得ます.

(1) ポイント

思考過程でも書きましたが

1. 接点を設定する
2. 接線の方程式を立てる
3. 2.の方程式に定点の座標を代入して接点の満たす条件式を求める

の流れを把握することです.

センターでは完全に誘導されていますが二次ではノーヒントです.

自力でこの流れができるようにしてください.

この流れは定点を通過する接線の存在をその接線の接点の存在に言い換えるためのものです.

3次以下の多項式関数においては

「定点を通る接線の本数」=「定点を通る接線の接点の個数」・・・(☆)

が成り立ちますから接線の存在条件と接点の存在条件が同値になるのです.

ただし「3次以下の多項式関数」と留保していることに注意してください.


4次以上の多項式関数では(☆)が成り立ちません.

これは接点の個数と接線の本数が一致しない状況を考えればわかります.

接点の個数と接線の本数が一致しない状況とは

1本の接線が2個以上の接点を持つとき」です.

図1
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このような複数の接点を持つ接線のことを「複接線」といいます.

つまり

「複接線が存在する」⇒「(☆)は不成立」

です. この対偶をとれば

「(☆)が成立」⇒「複接線が存在しない」

(☆)の成立には「複接線が存在しない」ことが必要です.

そして「3次以下の多項式関数」には複接線が存在しません.

図1を例に証明すると

y=f(x) , y=g(x)x=t_1,\ t_2 の2点で接するとき

f(x)-g(x)(x-t_1)^2(x-t_2)^2 を因数にもつことになり f(x)-g(x)最低でも4次多項式となります.

直線 y=g(x)最高でも1次ですから y=f(x)最低でも4次以上多項式ということになります.

つまり複接線が存在する多項式関数 y=f(x) は最低でも4次以上で3次以下となることはありません.

よって「3次以下の多項式関数」には複接線が存在しません.

そして

複接線が存在しないとき,1本の接線に2個以上の接点が存在することはなく1本の接線には1個の接点が存在することになります.

その結果,接線の本数と接点の個数は一対一に対応します.

よって

「複接線が存在しない」⇒「(☆)は成立」

となり結局

「接線の本数と接点の個数が一致する」⇔「接線を持つ曲線が3次以下の多項式関数」(★)

ということなになります.

(より正確に言えば曲線ということですから2次または3次の多項式関数です)

本問では2次の多項式関数の接線を求めているのですから(★)を満たします.


(2) 思考過程

y=(4a-2)x-4a^2+4a・・・①

を直線 l とし y 軸との交点を R\ (0\ ,r) とするのですから①に x=0 を代入して

r=-4a^2+4a

r>0 となるのは

r>0⇔-4a^2+4a.>0\\⇔a(a-1)<0\\⇔0<a<1

R\ (0\ ,-4a^2+4a),\ P\ (a\ ,2a)

となり Ry 軸上にあるから Px 座標が三角形 OPR の高さになります.

図2
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よって三角形 OPR の面積 S

\displaystyle S=\frac{1}{2}a(-4a^2+4a)\\=2(a^2-a^3)

0<a<1 のもとで S の増減を調べるため SS(a) として a微分して導関数 S'(a) を求めます.

S'(a)=2(2a-3a^2)\\=-2a(3a-2)

\begin{array}{|c|*5{c|}}\hline
  a & 0 & \cdots & \frac{2}{3} & \cdots & 1 \\ \hline
  s'(a) &  &   +    &  0 &    -   &  \\ \hline
  s(a) &  &\nearrow&   &\searrow&  \\ \hline
\end{array}

増減表より
S'(a)\displaystyle 0<a<\frac{2}{3} で正の値をとり \displaystyle a=\frac{2}{3} の前後で正から負へと符号が変化するので S(a)\displaystyle 0<a<\frac{2}{3} で単調増加, \displaystyle a=\frac{2}{3} で極大となります.

これより 0<a<1S(a) が最大となる可能性は \displaystyle a=\frac{2}{3} のときしかありません.

よってSの最大値は S(\frac{2}{3}) です.

S(\frac{2}{3})=2\{(\frac{2}{3})^2-(\frac{2}{3})^3\}\\\displaystyle =2\left(\frac{4}{27}\right)\\\displaystyle =\frac{8}{27}

これで(2)はおしまいです.

(2) ポイント

・三角形 OPR の面積は立式できましたか?

O\ ,P\ ,R の各座標がわかっているのでベクトルの成分計算を利用して

\displaystyle S=\frac{1}{2}|0\cdot2a-(-4a^2+4a)\cdot a|

\displaystyle S=\frac{1}{2}\sqrt{(\overrightarrow{|OP|})^2(\overrightarrow{|OR|})^2-(\overrightarrow{OP}\cdot\overrightarrow{OR})^2}


として面積を求める方法もありますが三角形の一辺が座標軸と平行な場合(本問では ORy 軸に平行),その辺を底辺とみることで小学校以来おなじみの(底辺)×(高さ)÷2の公式が使えるようになります.

この手法のほうが計算量が少なくて済むのでおススメです.


・面積の関数Sは3次関数となります

この関数の最大値を求めるには定義域内における関数の増減を調べる必要があります.

関数の増減は導関数の符号(正負)と一致します.

よって導関数を求めてその符号変化を調べることになります.

導関数が正から負へ変化するとき元の関数は増加から減少へと転じるのでそのときの値(極大値)が最大値の「候補」です.

ここで注意してほしいのは極大値はあくまで最大値の候補であって必ず最大値になるとは限らないということです.

極大値が最大値になるかどうかは定義域で決まります.

本問では定義域 0<a<1 内に極大値を超える値が存在しないため極大値が最大値となりますが

図3
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のような場合,3次関数 y=f(x)

定義域が 0<x<c のとき,極大値 f(a) が最大値となりますが

定義域が 0<x<d のとき,極大値 f(a) を定義域の上限での関数値 f(d) が越えるため,f(d) が最大値となります.

実戦的な最大値の判定としては

1.極大値を与える点が定義域内に含まれているか(含まれなければ最大値にはなりえない)
2.含まれているとして極大値以外に最大値となりうる点はないか(あれば極大値との大小比較が必要)

の2段構えが必要です.

「極大値=最大値」

と丸暗記している人がいるので注意してください.

(3) 思考過程

0<a<1 において放物線 C ,直線 l ,直線x=0\ ,\ x=a

で囲まれた図形の面積 T を求めよとのこと

直線 l の接点の x 座標 2a-10<a<1 のとき

0<a<1\\⇔0<2a<2\\⇔-1<2a-1<1

となって -1 から 1 の範囲を動きます.

-1<2a-1<0 のときと 0≦2a-1<1 のときとで T が表す図形の概形が変化するため場合分けが必要な気がしますが


・図形の境界となる x=0\ ,\ x=a が定積分積分区間となること

T の計算に現れる定積分被積分関数が上記の積分区間内において変わらないこと

に注意すると場合分けが不要なことがわかります.


T が表す図形のヨコは直線 x=0\ ,\ x=a で決まるため,あとはタテの境界を決める関数の上下関係が問題となります.

放物線 C は2次の係数の符号が正ですから下に凸な関数です.

直線 lC の接線ですから必ず C の下側に位置することになります.

T被積分関数

(上の境界を決める関数)ー(下の境界を決める関数)
ですから

( 放物線 C ) -( 直線 l

となります. ここで
 
Clx=2a-1 で接することよりこの差の関数を表す多項式\{x-(2a-1)\}^2 を因数にもつ

・放物線(2次)- 直線(1次)だからこの差の関数は2次の多項式で最高次の係数は放物線Cの最高次の係数と一致する

の上記2点に注意すると

T被積分関数

\{x-(2a-1)\}^2・・・②

と書けます.


②を x=0 から x=a の範囲で積分したものが T です.

\displaystyle T=\int_0^a\{x-(2a-1)\}^2dx\\\displaystyle =\frac{1}{3}\left[\{x-(2a-1)\}^3\right]_0^a\\\displaystyle =\frac{1}{3}\{(1-a)^3-(1-2a)^3\}\\\displaystyle =\frac{1}{3}(7a^3-9a^2+3a)\\\displaystyle =\frac{7}{3}a^3-3a^2+a

これで T が求まりました.

最後は関数 T の挙動を調べて終わりです.

関数の挙動は導関数の符号から判断します.

Ta微分した導関数T' とすると

T'=7a^2-6a+1

a の2次関数 T' のグラフを描いて \displaystyle \frac{2}{3}≦a<1 における T' の符号を調べます.

T' の概形を知るため T' を平方完成します.


\displaystyle T'=7(a-\frac{3}{7})^2-\frac{2}{7}

\displaystyle \frac{3}{7}<\frac{2}{3} より定義域の左の端点 \displaystyle a=\frac{2}{3}T' の軸の右側に位置します.

\displaystyle a=\frac{2}{3} のときの T' の値を求めると

\displaystyle T'(\frac{2}{3})=\frac{1}{9}

下に凸な2次関数の軸の右側は単調増加となるので T' は図4のようになります.

図4
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\displaystyle \frac{2}{3}≦a<1 において T' は正だから T はこの範囲で単調増加します.

よって解答欄へにあてはまるのは選択肢②の「増加する」です.

これで(3)はおしまいです.

(3) ポイント

・「l の接点が積分区間に含まれているか否か」での場合分けが不要なことを判断できましたか?
図5
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図6
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図5,6 のように一見 T の概形が変化するため別の関数に関する計算が必要な気になります.

しかし

・上下の境界を定める関数が2種類しかない

・その2つの関数が表す図形は接点をもつのでその2つの関数の上下関係は逆転しない

に気が付くと T の計算に現れる被積分関数は1種類に決まることがわかります.

被積分関数が1つしかないのですから場合分けなんて必要ありませんよね.


さらに実戦的なことを言えばセンターでは場合分けが必要なときは場合を教えてくれます.

本問では場合分けの指示がないため場合分けは不要なのだと判断できます.


場合分けをするか否で迷った人は上記のような判断をできるようにして時間の節約に努めてください.


被積分関数の計算について

被積分関数

(上の境界を決める関数)ー(下の境界を決める関数)
となりますから T


\displaystyle T=\int_0^a[x^2+1-\{(4a-2)x-4a^2+4a\}]dx

と計算します.

本問では積分区間の一端が 0 です.

0 が積分区間に含まれているときは積分計算の際の代入時に消える項が生じるので


\displaystyle T=\left[\frac{1}{3}x^3-(2a-1)x^2+(4a^2-4a+1)x\right]_0^a\\\displaystyle =\frac{1}{3}a^3-(2a-1)a^2+(4a^2-4a+1)a\\=\cdots

と計算が簡単になります.


一方,思考過程では被積分関数因数分解した形にしています.

これは

\displaystyle \int(ax+b)^ndx= \frac{a}{n+1}(ax+b)^{n+1}+C ( C積分定数 )

の公式の利用を想定しています.
(文系の範囲外の公式ですが便利ですので文系の人もぜひ覚えてください)

この形の計算は積分区間の端点が交点(接点)の座標になるときに威力を発揮します.

というのも因数分解された形に交点の座標を代入すると 0 になって消えるからです.

(\ 因数\ )=0

の形から交点の座標を求めているのですから交点の座標を代入すると 0 になるのは当たり前ですよね.

このように被積分関数因数分解された形のまま積分する手法は計算を簡略化する上で非常に重要です.


本問では残念ながら積分区間の端点が接点の座標となっていないためこの恩恵にあずかれないのですが応用力を養うという観点から思考過程ではこの手法を採用しました.


導関数の符号の調べ方

思考過程では2次関数のグラフから導関数の符号を判定しています.

導関数の符号を判定するのに導関数を解く必要はないことに注意してください.

導関数を求めた後

導関数=0

機械的導関数の方程式の解を求めようとする人がいます.

導関数の方程式の解が必要なのは極値を求める必要がある場合です.

本問では T の増減が問題となっているのだから極値を求める必要はありませんよね.

問題の要求に適した解法をとるようにしましょう.

最後に

(1)は問題ないでしょう.

(2)では三角形 OPR の面積の求め方で解答時間が変わるでしょう.

(3)は

・接点が積分区間に入るか否かで場合分けした人

・Tの導関数の解を求めてその解が \displaystyle \frac{2}{3}≦a<1 に含まれるかどうか判断しようとした人

などで大幅なタイムロスが生じています


このようにセンター試験は一見,一方通行の解答の流れになると思われがちなのですが,その細部では適切な解法を選択する判断を要求されます.

問題が解けたからといって解法の吟味を行わないのではこの判断力は身に付きません.

何度でも言いますがセンター試験は時間との闘いです.

問題を解きっぱなしにせずしっかりと解法の吟味を行い自分の解法よりも速い解法は積極的に採用するようにしましょう.