2017年 京都大学 数学 理系 第 2 問 を解こう

センター試験の出願が始まりました。
浪人生の方は忘れずに出願しましょう。

引き続き今年の京都大学の問題を解いていきます。
今回は2017年 京都大学 数学 理系 第 2 問 です。
問題はこちら


四面体 \mathrm{OABC} を考える.点 \mathrm{D\ ,\ E\ ,\ F\ ,\ G\ ,\ H\ ,\ I} は,それぞれ辺 \mathrm{OA\ ,\ AB\ ,\ BC\ ,\ CO\ ,\ OB\ ,\ AC} 上にあり, 頂点ではないとする.このとき,次の問いに答えよ.

( 1 ) \overrightarrow{\mathrm{DG}}\overrightarrow{\mathrm{EF}} が平行ならば \mathrm{AE}:\mathrm{EB}=\mathrm{CF}:\mathrm{FB} であることを示せ.

( 2 ) 点 \mathrm{D\ ,\ E\ ,\ F\ ,\ G\ ,\ H\ ,\ I} が正八面体の頂点となっているとき,これらの点は \mathrm{OABC} の各辺の中点であり,\mathrm{OABC} は正四面体であることを示せ.

( 2017 京都大学 数学 理系 第 2 問 )


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(1) 思考過程

空間図形の問題です.図形を扱うときは

・幾何的に処理する
・座標を設定して計算処理する
・ベクトルを設定して処理する

の主に3つの解法が考えられますが,本問では \overrightarrow{\mathrm{DG}}\overrightarrow{\mathrm{EF}} とわざわざベクトルを使うことを示唆してくれていますので素直に指示に従いましょう.

\overrightarrow{OA}\ ,\ \overrightarrow{OB}\ ,\ \overrightarrow{OC} は四面体 \mathrm{OABC} をつくるので一次独立です.
図1
f:id:tarumaru:20170928091651p:plain
線分比が問われているので各辺の線分比を設定して点 \mathrm{D\ ,\ E\ ,\ F\ ,\ G\ ,\ H\ ,\ I}O を始点とするベクトルで表すことにしましょう.

このとき,任意の空間ベクトルは一次独立な3つのベクトルの一次結合で表せることに注意すると \overrightarrow{OD} 等は \overrightarrow{OA}\ ,\ \overrightarrow{OB}\ ,\ \overrightarrow{OC} のみで表せることになるはずです.

0<s\ ,\ t\ ,\ u\ ,\ v\ ,\ x\ ,\ y<1 となる実数 s\ ,\ t\ ,\ u\ ,\ v\ ,\ x\ ,\ y を用いて

OD:OA=s:1-s
AE:EB=t:1-t
CF:FB=u:1-u
OG:GC=v:1-v
OH:HB=x:1-x
AI:IC=y:1-y
とすると

\overrightarrow{OD}=s\ \overrightarrow{OA}

\overrightarrow{OE}=(\ 1-t\ )\ \overrightarrow{OA}+t\ \overrightarrow{OB}

\overrightarrow{OF}=u\ \overrightarrow{OB}+(\ 1-u\ )\ \overrightarrow{OC}

\overrightarrow{OG}=v\ \overrightarrow{OC}

\overrightarrow{OH}=x\ \overrightarrow{OB}

\overrightarrow{OI}=(\ 1-y\  )\ \overrightarrow{OA}+y\ \overrightarrow{OC}

と表せます.

ここで示すべきものは

\mathrm{AE}:\mathrm{EB}=\mathrm{CF}:\mathrm{FB}

ですから

t=u

を示せばいいのです.

\overrightarrow{\mathrm{DG}}\overrightarrow{\mathrm{EF}} が平行」という条件から t=u 導けるかやってみましょう.

\overrightarrow{DG}=\overrightarrow{OG}-\overrightarrow{OD}=-s\ \overrightarrow{OA}+v\ \overrightarrow{OC}

\overrightarrow{EF}=\overrightarrow{OF}-\overrightarrow{OE}=(\ t-1\ )\ \overrightarrow{OA}+(\ u-t\ )\ \overrightarrow{OB}+(\ 1-u\ )\ \overrightarrow{OC}

ここで

\overrightarrow{DG}\overrightarrow{EF} が平行

\overrightarrow{DG}=k\ \overrightarrow{EF} をみたす 0 でない実数 k が存在する

\overrightarrow{DG}\overrightarrow{EF}\overrightarrow{OA}\ ,\ \overrightarrow{OB}\ ,\ \overrightarrow{OC} の係数が比例する

です.

いま,\overrightarrow{DG}\overrightarrow{OB} の係数は 0 ですから \overrightarrow{EF}\overrightarrow{OB} の係数も 0 になります.
( 0 は何倍しても 0 ですよね )

よって \overrightarrow{EF}\overrightarrow{OB} の係数 t-u0 になるので t=u となります.

これで示すべき等式が示されたことになり問題解決です.

(1) 解答の骨格

1.各辺の線分比を設定して6個の辺上の点を一次独立な3つのベクトル \overrightarrow{OA}\ ,\ \overrightarrow{OB}\ ,\ \overrightarrow{OC} で表す

2.\overrightarrow{DG}\overrightarrow{EF}\overrightarrow{OA}\ ,\ \overrightarrow{OB}\ ,\ \overrightarrow{OC} を用いて表す

3. 2.の係数比から ABBC の線分比を規定する実数が等しくなることを示す

(1) 解答例

0<s\ ,\ t\ ,\ u\ ,\ v\ ,\ x\ ,\ y<1 となる実数 s\ ,\ t\ ,\ u\ ,\ v\ ,\ x\ ,\ y を用いて

OD:OA=s:1-s
AE:EB=t:1-t
CF:FB=u:1-u
OG:GC=v:1-v
OH:HB=x:1-x
AI:IC=y:1-y
とすると

\overrightarrow{OD}=s\ \overrightarrow{OA}

\overrightarrow{OE}=(\ 1-t\ )\ \overrightarrow{OA}+t\ \overrightarrow{OB}

\overrightarrow{OF}=u\ \overrightarrow{OB}+(\ 1-u\ )\ \overrightarrow{OC}

\overrightarrow{OG}=v\ \overrightarrow{OC}

\overrightarrow{OH}=x\ \overrightarrow{OB}

\overrightarrow{OI}=(\ 1-y\  )\ \overrightarrow{OA}+y\ \overrightarrow{OC}

となるから

\overrightarrow{DG}=\overrightarrow{OG}-\overrightarrow{OD}=-s\ \overrightarrow{OA}+v\ \overrightarrow{OC}・・・①

\overrightarrow{EF}=\overrightarrow{OF}-\overrightarrow{OE}=(\ t-1\ )\ \overrightarrow{OA}+(\ u-t\ )\ \overrightarrow{OB}+(\ 1-u\ )\ \overrightarrow{OC}・・・②

\overrightarrow{OA}\ ,\ \overrightarrow{OB}\ ,\ \overrightarrow{OC} は一次独立で \overrightarrow{DG}\overrightarrow{EF} が平行だから

u-t=0\\∴t=u

このとき AE:EB=CF:FB となるから題意は示された

(1) まとめポイント

\mathrm{D\ ,\ E\ ,\ F\ ,\ G\ ,\ H\ ,\ I} の6個の点を指定するためパラメータが6つ必要になります.
文字が多いため混乱しないようにしましょう.

\mathrm{D\ ,\ E\ ,\ F\ ,\ G\ ,\ H\ ,\ I} の位置ベクトルを表すために始点を揃えます.

始点は四面体の頂点 O\ , \ A\ , \ B\ , \ C のどれでもよいですが O を始点にとるのがわかりやすいでしょう.
(四面体の頂点以外の点を始点とするのはやめましょう.四面体を構成することが保証されていないベクトルの組から成る一次結合では係数比較はできません)

・「\overrightarrow{DG}\overrightarrow{EF} が平行」であることは係数が等しいことではりません.

思考過程にあるように正しくは「係数比」が等しいです.

本問では \overrightarrow{DG}\overrightarrow{OB} の係数が 0 になっているので結果的に係数間に等号が成立しているように見えるだけです.

解答例において v=1-u などとしないようにしましょう.

(2) 思考過程

\mathrm{D\ ,\ E\ ,\ F\ ,\ G\ ,\ H\ ,\ I} が正八面体の頂点となるとどのようなことが言えるのか考えてみましょう.

正八面体の6つの頂点のうち,2つの向かい合う頂点は残りの4つの頂点が成す正方形を対称面とする位置にあります.
図2
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( 1 ) の利用を考えれて対称面の正方形を DEFG とします.

このとき \overrightarrow{DG}=\overrightarrow{EF},( 1 ) より

-s=t-1\ ,\ v=1-u

s=v=1-t ( ∵ t=u)

これより

OD:DA=OG:GC=BE:EA=BF:FC=s:1-s

が言えます.

\displaystyle s=\frac{1}{2}

となれば \mathrm{D\ ,\ E\ ,\ F\ ,\ G} の4点が中点となることが言えます.

ただ,このままでは \mathrm{H\ ,\ I} に関する情報が得られないので \mathrm{H\ ,\ I} を含む対称面を考えます.正方形 DIFH に対して

\overrightarrow{DI}=\overrightarrow{HF} です.

\overrightarrow{DI}=\overrightarrow{OI}-\overrightarrow{OD}=(\ 1-y-s\ )\ \overrightarrow{OA}+y\ \overrightarrow{OC}

\overrightarrow{HF}=\overrightarrow{OF}-\overrightarrow{OH}=(\ u-x\ )\ \overrightarrow{OB}+(\ 1-u\ )\ \overrightarrow{OC}

係数比較して

1-y-s=0・・・①
u-x=0・・・②
y=1-u・・・③

①より y=1-s
③より y=1-u=1-t=s

①,③より
1-s=s\ \ ∴\displaystyle s=y=\frac{1}{2}

②より
\displaystyle x=u=t=1-s=\frac{1}{2}

これで線分比を表すパラメータがすべて \displaystyle \frac{1}{2} となったので 点 \mathrm{D\ ,\ E\ ,\ F\ ,\ G\ ,\ H\ ,\ I} が各辺の中点となることが示されました.

後は \mathrm{OABC} が正四面体となることを示すのみです.

正四面体となるとき4つの面は同じ正三角形となります.

つまり 「\triangle{OAB}\ ,\ \triangle{OBC}\ ,\ \triangle{OCA}\ ,\ \triangle{ABC} が合同な正三角形となる」・・・(☆)ことを示せばよいのです.

どうやって☆を示せよいのでしょうか?

いま,四面体 \mathrm{OABC} の各辺の中点がわかっています.

そしてこの中点が成す三角形のうち正八面体の面を構成する三角形は合同な正三角形となります.

このような正三角形の1つである辺 OA\ , \ OB\ ,\ OC の中点 D\ , \ H\ ,\ G が成す \triangle{DHG} に着目してみると

\overrightarrow{OA}=2\overrightarrow{OD}\ ,\ \overrightarrow{OB}=2\overrightarrow{OH}\ ,\ \overrightarrow{OC}=2\overrightarrow{OG}

より \triangle{ABC} は点 O を中心として \triangle{DHG} を2倍に相似拡大させた三角形となることがわかります.
図3
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\triangle{OAB}\ ,\ \triangle{OBC}\ ,\ \triangle{OCA} についても同様にそれぞれ \triangle{GIF}\ ,\ \triangle{DEI}\ ,\ \triangle{HFE} を2倍に相似拡大させた三角形となります.

そして \triangle{DHG}\ ,\ \triangle{GIF}\ ,\ \triangle{DEI}\ ,\ \triangle{HFE} は正八面体の各面なので合同な正三角形です.

合同な正三角形をそれぞれ2倍に相似拡大させた三角形もまた合同な正三角形となります.

よって \triangle{OAB}\ ,\ \triangle{OBC}\ ,\ \triangle{OCA}\ ,\ \triangle{ABC} は合同な正三角形となり☆が示されました.

これで問題が解けました.

(2) 解答の骨格

1.( 1 ) の \overrightarrow{DG}=\overrightarrow{EF} から OD:DA=OG:GC=BE:EA=BF:FC=s:1-s を導く

2.\overrightarrow{DI}=\overrightarrow{HF} から \displaystyle s=x=y=\frac{1}{2} を導き \mathrm{D\ ,\ E\ ,\ F\ ,\ G\ ,\ H\ ,\ I} が四面体 \mathrm{OABC} の各辺の中点となることを示す

3.四面体 \mathrm{OABC} の各面が正八面体の各面を相似拡大したものであることから正四面体であると証明する

(2) 解答例

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\mathrm{D\ ,\ E\ ,\ F\ ,\ G\ ,\ H\ ,\ I} は正八面体の頂点だから

\overrightarrow{DG}=\overrightarrow{EF}

( 1 ) の①,②より

-s=t-1\ ,\ v=1-u

s=v=1-t  ( ∵ t=u )

これより

OD:DA=OG:GC=BE:EA=BF:FC=s:1-s・・・(☆)

また正方形 DIFH に対して

\overrightarrow{DI}=\overrightarrow{OI}-\overrightarrow{OD}=(\ 1-y-s\ )\ \overrightarrow{OA}+y\ \overrightarrow{OC}

\overrightarrow{HF}=\overrightarrow{OF}-\overrightarrow{OH}=(\ u-x\ )\ \overrightarrow{OB}+(\ 1-u\ )\ \overrightarrow{OC}

\overrightarrow{DI}=\overrightarrow{HF}\overrightarrow{OA}\ ,\  \overrightarrow{OB}\ ,\  \overrightarrow{OC} は一次独立だから

1-y-s=0・・・③
u-x=0・・・④
y=1-u・・・⑤

③より y=1-s
⑤より y=1-u=1-t=s

③,⑤より
1-s=s\ \ ∴\displaystyle s=y=\frac{1}{2}

④より
\displaystyle x=u=t=1-s=\frac{1}{2}

よって \displaystyle s=x=y=\frac{1}{2} と(☆)より \mathrm{D\ ,\ E\ ,\ F\ ,\ G\ ,\ H\ ,\ I} は四面体 \mathrm{OABC} の各辺の中点となる.

このとき

\overrightarrow{OA}=2\overrightarrow{OD}\ ,\ \overrightarrow{OB}=2\overrightarrow{OH}\ ,\ \overrightarrow{OC}=2\overrightarrow{OG} より

\triangle{ABC} は点 O を中心として \triangle{DHG} を2倍に相似拡大させた三角形となる.
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同様に \triangle{OAB}\ ,\ \triangle{OBC}\ ,\ \triangle{OCA} はそれぞれ \triangle{GIF}\ ,\ \triangle{DEI}\ ,\ \triangle{HFE} を点 C\ ,\ A\ ,\ B を中心として2倍に相似拡大させた三角形である.

\triangle{DHG}\ ,\ \triangle{GIF}\ ,\ \triangle{DEI}\ ,\ \triangle{HFE} は正八面体の各面で合同な正三角形.よってこれらを相似拡大した \triangle{OAB}\ ,\ \triangle{OBC}\ ,\ \triangle{OCA}\ ,\ \triangle{ABC} も合同な正三角形となるから四面体 \mathrm{OABC} は正四面体である.(証明終わり)


(2) まとめポイント

・正八面体は合同な正三角形の面から成る立体です.

図を正確に描かないとどの辺が平行になるかわかりにくいと思います.

対称面が正方形になることを考えれば平行になる辺の組を立式し易いでしょう.

・解答例のように面に着目するのではなく辺に着目して四面体 \mathrm{OABC} は正四面体であることを示すこともできます.

すなわち中点連結定理を利用して四面体 \mathrm{OABC} の各辺が正八面体の各辺の2倍になることを繰り返し示すことで証明できます.

例:\overrightarrow{AB}=2\overrightarrow{DH}

最後に

空間図形の問題ですが問題文でベクトルの表記がなされているので方針選択の段階でベクトルを選択するのに迷う人はほとんどいないでしょう.

本問のようにベクトルの表記がない場合,さすがに座補設定する人はいないでしょうが幾何的性質のみで解こうとする人がいるでしょう(幾何の感覚に自信がある人に顕著です)

「平行」という条件や「線分比」で実数(パラメータ)を設定するような問題では向き・大きさや係数比に関する代数計算を一遍に扱えるベクトルを選択するのが最適です.

ベクトル表記が問題にない場合でも本問のような問題設定ではベクトルを選択できるように判断力を研ぎ澄ますようにしておきましょう.