夏休み中に基礎力チェック! 2017 センター試験数学ⅡB第 1 問を解こう

夏休みも残りわずかです.

最後にセンターの仕上げをしておきましょう.
今回は2017 センター試験数学ⅡB第 1 問です.
問題はこちら
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[1] 思考過程

三角関数の値を求める問題です.

とりあえず誘導に従って進めていきましょう.

\displaystyle \cos2α+\cos2β=\frac{4}{15}・・・①

に2倍角の公式を用いると

①⇔\displaystyle 2\cos^2α-1+2\cos^2β-1=\frac{4}{15}\\⇔\displaystyle \cos^2α+\cos^2β=\frac{17}{15}

\displaystyle \cosα\cosβ=-\frac{2\sqrt{15}}{15}・・・②

②の両辺を2乗して

\displaystyle \cos^2α\cos^2β=\frac{4\cdot15}{15^2}=\frac{4}{15}

①,②を変形したら \cos^2α\ ,\ \cos^2β の基本対称式が現れました.

よって解と係数の関係より,\cos^2α\ ,\ \cos^2β2次方程式の解となります.

\cos^2α\ ,\ \cos^2β を解にもつ2次方程式

\displaystyle t^2-\frac{17}{15}t+\frac{4}{15}=0

とおけるのでこの方程式より

(3t-1)(5t-4)=0

\displaystyle t=\frac{1}{3}\ ,\ \frac{4}{5}

t\cos^2α\ ,\ \cos^2β のどちらかです.

ここで

|\ \cosα\ |≧|\ \cosβ\ |・・・③

より

|\ \cosα\ |≧|\ \cosβ\ |\\⇔|\ \cosα\ |^2≧|\ \cosβ\ |^2\\⇔\cos^2α≧\cos^2β

この大小関係よりtの大きいほうが \cos^2α です.

よって

\displaystyle \cos^2α=\frac{4}{5}\ ,\ \cos^2β=\frac{1}{3}

となります.

0≦α≦π\ ,\ 0≦β≦π より

\cosα\ ,\ \cosβ は正負両方の値をとり得ます.

つまり \displaystyle \cosα=\pm\frac{2\sqrt{5}}{5}\ ,\ \cosβ=\pm\frac{\sqrt{3}}{3} です.

ここで

\displaystyle \cosα_1=\frac{2\sqrt{5}}{5}\ ,\ \cosα_2=-\frac{2\sqrt{5}}{5}

\displaystyle \cosβ_1=\frac{\sqrt{3}}{3}\ ,\ \cosβ_2=-\frac{\sqrt{3}}{3}

として図示すると

図1
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α として α_2 をとると β_1\ ,\ β_2 のどちらよりも α のほうが大きくなってしまい α<β に反します.

よって α=α_1 となりますから

\displaystyle \cosα=\frac{2\sqrt{5}}{5}

β_1\ ,\ β_2α_1 よりも大きいためどちらも α<β を満たしますが②より \cosα が正のとき,\cosβ は負となります.

よって β=β_2 となり

\displaystyle \cosβ=-\frac{\sqrt{3}}{3}

これで [1] が解けました.

[1] ポイント

・ \cos^2α\ ,\ \cos^2β の基本対称式から \cos^2α\ ,\ \cos^2β2次方程式の解として求めることができることに気が付きましたか.

2文字についての基本対称式

解と係数の関係

その2文字を2次方程式の解として求める

の流れは基本ですのでスラスラとできるようにしてください.

[2] 思考過程

対数関数に関する問題.

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対数関数 y=\log_2x 上の点 B\ (p\ ,\ \log_2p)\ ,\ C\ (q\ ,\ \log_2q)

について真数条件:(真数)>0 より

p>0\ ,\ q>0

点Cは線分ABを 1:2 に内分する点だから

\displaystyle q=\frac{2}{3}(Aの\ x\ 座標)+\frac{1}{3}(Bの\ x\ 座標)\\\ \ \displaystyle =\frac{2}{3}(0)+\frac{1}{3}(p)\\\ \ \displaystyle =\frac{1}{3}p・・・④

\displaystyle \log_2q=\frac{2}{3}(Aの\ y\ 座標)+\frac{1}{3}(Bの\ y\ 座標)\\\ \ \displaystyle =\frac{2}{3}(\frac{3}{2})+\frac{1}{3}(\log_2p)\\\ \ \displaystyle =\frac{1}{3}\log_2p+1・・・⑤

⑤より

\log_2p=3(\log_2q-1)\\\ \ \ \ \ \ \ \ \ =3(\log_2q-\log_22)\\\ \ \ \ \ \ \ \ \ \displaystyle =3log_2\frac{q}{2}\\\ \ \ \ \ \ \ \ \ \displaystyle =\log_2\left(\frac{q}{2}\right)^3

よって真数が等しいことより

\displaystyle p=\left(\frac{q}{2}\right)^3=\frac{1}{8}q^3・・・⑥

④より p=3q でこれを⑥に代入して

\displaystyle 3q=\frac{1}{8}q^3⇔q^2=24\ \ (\ ∵\ q\ >0)

q\ >0 より q=2\sqrt{6}

p=3q より p=6\sqrt{6}

最後に \log_22\sqrt{6} 少数第2位まで求めます.

常用対数の値が与えられているので底を2から10に変換することになりますがその前に簡単にわかる整数部分を求め根号をはずしておきます.

\log_2(2\sqrt{6})=\log_22+\log\sqrt{6}\\\displaystyle =1+\frac{1}{2}\log_26\\\displaystyle =1+\frac{1}{2}(\log_22+\log_23)\\\displaystyle =1+\frac{1}{2}+\frac{1}{2}\log_23

\log_23 はこのままでは具体的に求められないので常用対数に変換します.

\displaystyle \log_23=\frac{\log_{10}3}{\log_{10}2}\\\displaystyle =\frac{0.4771}{0.3010}\\=1.58\cdots

よって

\displaystyle \log_2(2\sqrt{6})=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{2}\log_23\\=1+0.5+0.79\cdots\\=2.29\cdots

2.29 の少数第2位の 9 を四捨五入して求める答えは

2.3

となります. これで [2] が解けました

[2] ポイント

・内分点の公式は正しく使えましたか.

内分比をどちらの点に掛けるか忘れる(違う点に掛ける)

といったミスが目立ちます.

この公式の使い方のコツとしては

まず,問題文の読み方にあります.

「線分 AB1:2 に内分」

と読んだら

線分の前の文字 (A) を内分比の後の数字 (2) に,線分の後の文字 (B) を内分比の前の数字 (1) に対応させてください.

この対応が点と掛ける内分比の数字の対応になります.

こうすれば上で述べたようなミスは防げます.

頭の中で線分をイメージして内分比をクロスさせる感覚でもよいのですが問題文に現れる字面だけで判断できるということを押さえておくと感覚のチェックになりますし,ことセンターにおいては時間の節約という面でも有利だと思います.

・対数の近似値は求められましたか.

式変形で常用対数に変換して計算するとよいのですが ,\log_22\sqrt{6} を評価する(不等式をつくるという意味です)と考えた人もいるでしょう.

評価する場合,甘く評価すると判断に苦しむことになります.

無理数 \sqrt{6} の評価から出発します.

一番思いつき易い評価は

4<6<9\\⇔2<\sqrt{6}<3\\⇔4<2\sqrt{6}<6・・・★

でしょう.ここで

\displaystyle \log_22\sqrt{6}=\frac{\log_{10}2\sqrt{6}}{\log_{10}2}

に注意して

★⇔\log_{10}4<\log_{10}2\sqrt{6}<\log_{10}6\\⇔2\log_{10}2<\log_{10}2\sqrt{6}<\log_{10}2+\log_{10}3\\⇔\displaystyle 2<\frac{\log_{10}2\sqrt6}{\log_{10}2}<1+\frac{\log_{10}3}{\log_{10}2}\\⇔2<\log_22\sqrt{6}<1+1.58\cdots

となります.こうなると \log_22\sqrt{6} は右辺から2.58以下となることは確定するのですが2.55以上となる可能性がまだ残されています.

\log_22\sqrt{6}≧2.55 のとき,小数点第2位を四捨五入すると

\log_22\sqrt{6}≒2.6 となり解答する選択肢は⑦となります.

一方,\log_22\sqrt{6}<2.55 のとき,小数点第2位を四捨五入しても \log_22\sqrt{6}≒2.6 となり得ませんから選択肢の中で★を満たすものは選択肢⑥の 2.3 だけとなります.

このままだと選択肢が⑥なのか⑦なのか確定できません.

これは評価が甘いのが原因です.

もっと厳しく評価したらどうでしょうか.

問題文に \log_{10}7 の値が与えられているのがヒントになっています.

再び無理数 \sqrt{6} の評価から出発します.

4<6<7\\⇔2<\sqrt{6}<\sqrt{7}\\⇔4<2\sqrt{6}<2\sqrt{7}\\⇔\log_{10}4<\log_{10}2\sqrt{6}<\log_{10}2\sqrt{7}\\\displaystyle ⇔2\log_{10}2<\log_{10}2\sqrt{6}<\log_{10}2+\frac{1}{2}\log_{10}7\\⇔\displaystyle 2<\frac{\log_{10}2\sqrt6}{\log_{10}2}<1+\frac{1}{2}\cdot\frac{\log_{10}7}{\log_{10}2}\\⇔2<\log_22\sqrt{6}<1+1.40\cdots\\⇔2<\log_22\sqrt{6}<2.40\cdots

となり,これを満たす選択肢は⑥しかありませんから解答が確定します.

また,常用対数を利用しない方法もあります.

\displaystyle \log_22\sqrt{6}=1+\frac{1}{2}\log_26

ここで

\displaystyle \frac{1}{2}\log_24<\frac{1}{2}\log_26<\frac{1}{2}\log_28\\⇔\displaystyle 1<\frac{1}{2}\log_26<\frac{3}{2}

よって

\displaystyle 2<\log_22\sqrt{6}<2.50

となり解答が確定します.

最後に

[1] は \cos^2α\ ,\ \cos^2β の基本対称式から解と係数の関係の利用を思いつかないとどうしようもありません.

他の設問では利用すべき関係式を丁寧に誘導してあるのにこの部分ではそれがありません.

(基本対称式からの解と係数の関係の利用はあまりにも基本的だと考えてさすがに出題者も誘導を躊躇したのでしょうか)

基本対称式から解と係数の関係の利用を思いつなかった人は要注意です.

2次方程式の解の大小関係から \cos^2α\ ,\ \cos^2β を決定したり,α\ , \ β の大小関係および \cosα\ ,\ \cosβ の積の符号から \cosα\ ,\ \cosβ の符号を決定するなど計算一辺倒ではない判断力が要求されているので注意しましょう.

[2] はセンターでは珍しい近似値に関する問題です.

ポイントで示したように 2<\sqrt{6}<3 という最も思いつきやすい評価をすると解答が確定できなくなるという出題者の罠が待ち受けています.

「評価なんてしないで直接計算すればいいじゃん」と思う人もいるでしょうが,評価したほうが速いケースもあるのでどちらの方法が良いのかは断定できない部分があります.

また、直接計算する上でも小数点が絡む計算を実行するのは時間制約の厳しいセンターにおいては相当な心理的圧力になります.

私の観測範囲では

少数の割り算の計算ミス

2<\sqrt{6}<3 と評価したことによる解答確定不能

に誤答が集中しています.

推測ですが今年のセンターⅡBで最も正答率が低い設問ではないでしょうか

実戦的には

\displaystyle \log_2(2\sqrt{6})=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{2}\log_23

まで求めたあと

\displaystyle \frac{1}{2}\log_22<\frac{1}{2}\log_23<\frac{1}{2}\log_24\\\displaystyle ⇔
\frac{1}{2}<\frac{1}{2}\log_23<1
これより

2<\log_2(2\sqrt{6})<2.50

として少数の割り算を回避して選択肢を絞るのが速いでしょう.