2017年 東京大学 数学 理系 第6問を解こう

今回は2017年東京大学数学理系第6問を解いていきましょう
問題はこちら


\mathrm{O}を原点とする座標空間内で,一辺の長さが1の正三角形\mathrm{OPQ}を動かす。また,点\mathrm{A}(1,0,0)に対して,\mathrm{∠AOP}θとおく。
ただし
0^\circ\leqqθ\leqq180^\circとする。

(1) 点\mathrm{Q}(0,0,1)にあるとき,点\mathrm{P}x座標がとりうる値の範囲と,θがとりうる値の範囲を求めよ。

(2) 点\mathrm{Q}が平面x=0上を動くとき,辺\mathrm{OP}が通過しうる範囲をKとする。Kの体積を求めよ。

(2017 東京大学 理科 第6問)

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思考過程

長さ1の正三角形OPQのうち、OとQが定まっていて残りのPが座標空間上を動くとき、Pのx座標の取りうる範囲を求めます。
図形的に明らかですが、念のため計算で求めます。
わからない量を文字で置いて求めるのは中学数学以来おなじみでしょう。
 P(x,y,z)と置きます。
長さについて条件が与えらていますから使います。
 O(0,0,0),Q(0,0,1),でOP,QPの長さは1だから
 OP^2=(x-0)^2+(y-0)^2+(z-0)^2\\
   1=x^2+y^2+z^2・・・①

 QP^2=(x)^2+(y-0)^2+(z-1)^2\\
   1=x^2+y^2+z^2-2z+1\\
   0=x^2+y^2+z^2-2z・・・②

①-②より
2z=1
\displaystyle z=\frac{1}{2}
これを①に代入して
\displaystyle x^2+y^2+\frac{1}{4}=1
\displaystyle x^2+y^2=\frac{3}{4}
これでPが\displaystyle z=\frac{1}{2} 上にあり (x,y)=(0,0) を中心とする半径
\displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2}の円上にあることがわかります。

半径が \displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2} ですからxの取りうる範囲は
\displaystyle -\frac{\sqrt{3}}{2} \leqq x \leqq \frac{\sqrt{3}}{2} です。
f:id:tarumaru:20170627135729p:plain

次にθの取りうる範囲を求めましょう。
θ∠AOPとのことです。
角度を求める場合、平面上なら傾きからtanを求める手法もありますが、空間ならベクトルの内積を利用するのがほとんどです。
内積の定義式より各ベクトルの成分がわかれば内積、ベクトルの大きさが決まりcosθが定まります。
cosθからθが求まります。

 A(1,0,0)ですから
 OP・OA=(x,y,z)・(1,0,0)=x,|OP|=|OA|=1より
\displaystyle OP・OA=|OP||OA|cosθ\\
\displaystyle cosθ=\frac{OP・OA}{|OP||OA|}
  =x
cosθがxで表されました。

xの取りうる範囲は\displaystyle -\frac{\sqrt{3}}{2} \leqq x \leqq \frac{\sqrt{3}}{2}でしたから、
\displaystyle -\frac{\sqrt{3}}{2} \leqq θ \leqq \frac{\sqrt{3}}{2}
です。
0^\circ \leqqθ \leqq180^\circよりθの取りうる範囲は
30^\circ \leqqθ \leqq150^\circ
です。これで(1)が解けました。


解答の骨格

1.Pを座標設定して長さの条件を表す
2. 1.からx,y,zの関係式を求める
3. 2.で得られた関係式からxの範囲を求める
4. 内積を利用してcosθを求める
5. cosθからθを求める

解答例

P(x,y,x)とする
正三角形OPQの一辺の長さが1であるから
OP^2=1⇔x^2+y^2+z^2=1・・・①
QP^2=1⇔x^2+y^2+z^2-2z=0・・・②
①-②より
\displaystyle z=\frac{1}{2}・・・③
③を①に代入して
\displaystyle x^2+y^2=\frac{3}{4}
よってP
\displaystyle z=\frac{1}{2}, (x,y)=(0,0) を中心とする半径
\displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2}の 円上にあるから
求めるxの範囲は
\displaystyle -\frac{\sqrt{3}}{2} \leqq x \leqq \frac{\sqrt{3}}{2}

次に
OP・OA=(x,y,z)・(1,0,0)=x,|OP|=|OA|=1より
\displaystyle cosθ=\frac{OP・OA}{|OP||OA|}
  =x
よって
\displaystyle -\frac{\sqrt{3}}{2}\leqq cosθ \leqq\frac{\sqrt{3}}{2}
0^\circ \leqqθ \leqq180^\circより求めるθの範囲は
30^\circ \leqqθ \leqq150^\circ



ちょっとした別解

図形的に考察するとxの範囲はすぐにわかります。
f:id:tarumaru:20170627135732p:plain
Qが(0,0,1)に固定されており、長さ1の正三角形という条件(☆)からPは線分OQの垂直二等分線上にあり、Pのz座標は\displaystyle \frac{1}{2}です。
条件(☆)はz軸のまわりにPを回転させても不変です。
つまり空間上で条件(☆)を満たす点Pの集合は
中心\displaystyle (0,0,\frac{1}{2}),半径\displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2}の円です。
半径からx座標の範囲が求まり、\displaystyle -\frac{\sqrt{3}}{2} \leqq x \leqq \frac{\sqrt{3}}{2}
です。


まとめポイント

xの範囲を求める部分は図形的に考えても計算で考えても容易です。

θの範囲を求める部分では直接θを求めるのではなくcosθを経由して求めるのがポイントです。空間座標における角度を内積からcosθを経由して求めるのは定石ですから思いつかなかった人は必ず身につけましょう。

(2)は次回で