梅雨でジメジメとした日が続きますが数学の問題を解いてアタマはスッキリさせましょう。
前回の続きとなる(2)を解きましょう。
問題はこちら
複素数平面上の原点以外の点に対し,とする。
(1) をでない複素数とし,点と原点を結ぶ垂直二等分線をとする。
点が直線上を動くとき,点の軌跡は円から点を除いたものになる。
この円の中心と半径を求めよ。
(2) の乗根のうち,虚部が正であるものをとする。点と点を結ぶ線分上を点が動くときの点の軌跡を求め,複素数平面上に図示せよ。
(2017 東京大学 理科 第3問)
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思考過程
求めるものは(1)と同様、の軌跡です。
がによって決まるのも同じですが、の動く領域がとを結ぶ線分上となりの存在条件がによって決定されることになります。
そこでまずはを求めることにしましょう。
は1の3乗根ですからの解です。
の虚部は正だからは虚数での解
これを解いて
これでとが求まりました。
ではがとを結ぶ線分上にあることをどうすれば数式化できるでしょうか。
ここでとは共役であり実軸に対して対称であることに注目します。
このときとを結ぶ線分は虚軸に対して平行ですから実軸に対して垂直となります。
またとを結ぶ線分上にある点は実部の値が常にです。
常に一定値をとるということと垂直ということから垂直二等分線が想起されます。
ということは(1)が利用できそうです。
とを結ぶ線分が垂直二等分線になるとするとどの2点に対して等距離にあるとすればいいのでしょうか。
(1)の利用を考えればのO,のうち、Oはそのままにしての値を変えればよさそうです。
Oとを結ぶ線分がとを結ぶ線分に対して垂直となればいいのですからを実軸上にとればいいのです。
Oと(実数)がから等距離にある。
⇔はOとの中点
⇔
これでとを結ぶ線分上にあるが
として数式化されました・・・?
まだ不十分です。
①はがOと-1から等距離にある直線上にあることを意味しており線分ではありません。
どうやって線分上にあるという条件を付け加えればよいのでしょうか。
直線を線分にすることは長さを限定することです。
なにか長さを限定する条件はないかと考えて①を視覚化すると
とを結ぶ線分がOを中心とする半径1の円内に収まることがわかります。
つまりとを結ぶ線分上にあるはOからの距離が1以内
⇔・・・②
よってが①かつ②を満たすことががとを結ぶ線分上にある条件です。
あとは(1)と同様にしてを①かつ②に代入すれば終わりです。
(1)よりに注意して
①にを代入して
②にを代入して
①’かつ②’を満たす点の集合が求める軌跡です。
①’は下図の円、②’は下図の灰色の領域になります。
この共通集合を図示すれば答えとなります。
解答の骨格
1. を解いてとを求める
2. がとを結ぶ線分上にある条件
を導く
3. を2.の式に代入しての式を導いて図示する
解答例
はの3乗根だからの解
は虚数だからの解、の虚部は正より
,これより
とを結ぶ直線は点Oと点の垂直二等分線となる
が動くのはその直線のうち、を満たす部分となる線分である
(1)のをとして
かつ・・・①
(1)よりに注意して①にを代入して整理した式が求める点の軌跡である
かつ・・・②
②より点の軌跡はを中心とする半径の円のうち、Oを中心とする半径の円周を含んだ外側の部分である
これを図示すると下図の実線となる
まとめポイント
とが実軸に対して対称であることより垂直二等分線を想起できれば自然と(1)の利用が思いつくはずです。
あとはとを結ぶ線が直線ではなく線分であることを立式できたかどうかがポイントです。
ないしを具体的にa+biなどとおいて
とを結ぶ線分上にある
⇔の実部=かつの虚部≦
と計算から求めることもできますが時間がかかります。
(1)の利用への誘導が明白なので素直に(1)を利用するのが得策です。
最後に
さて、2017年度東京大学理系数学第3問を解いたわけですがいかがでしたでしょうか。「あれ、なんか簡単じゃね?」と思った人も多いのではないでしょうか。
解答例を見ればわかるように計算量はとても少ないです。
また解答の骨格からわかるように答えに至るステップも少ないです。
これは今年の東大数学の他の問題にも共通していて今年の東大数学が大幅易化したと言われる所以です。
さらにこの問題(1)では軌跡を求める点の概形が円であるとはっきり与えられています。
(普通の入試問題ならどんな軌跡になるかを求めさせます)
このおかげで答えの形がとなることは容易にわかりの存在条件である垂直二等分線もこの形が参考となるので立式は容易です。
さらにさらに軌跡に除外点があることをわざわざ明示しています。
(これまた普通の入試問題なら場合分けが必要な除外点の存在に気付くかどうかが採点ポイントになります)
このおかげでに気づいて減点を免れた人もいたことでしょう。
ここまで親切な東大数学は見たことがありません。
今年の東大数学を象徴するような問題として第3問を選んでみました。
「全然わからなかった~」という人もいるでしょう。
まだ受験本番まで時間はあります。
今はできなくても本番までにできるようにすればいいんです。
むやみやたらと問題数をこなすのではなく一問一問しっかりと考えて身に付けていくのが受験数学を攻略する近道です。
がんばっていきましょう。