前回の続きです。
問題はこちら
とおき,自然数に対して
と定める。
以下の問いに答えよ。ただし設問(1)は結論のみをかけばよい。
(1)の値を求めよ。
(2)とする。積を,とを用いて表せ。
(3)は自然数であることを示せ。
(4)との最大公約数を求めよ。 (2017 東京大学 理科第4問 文科第4問 )
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思考過程
ととの最大公約数を求めよとのこと。
(1)から(3)まででわかることは
とがともに自然数であるということだけです。
とが具体的な自然数としてわかったわけではありません。
具体的な数として与えられているのは
(としています)・・・①
ということです。
(1),(2)でやったようにを利用してnの式で表されたとを求めてから最大公約数を調べることもできそうですがどうにも面倒くさそうです。
とりあえずn=1のときのとから何がわかるか調べてみましょう。
(最大公約数をを求めるときは素因数分解のカタチにしておくと楽です。素因数分解を利用した最大公約数の求め方は補講で)
ですからとの最大公約数は2です。
これだけではデータが足りないのでとの最大公約数も調べてみます。
を求めるのは①より(2)の漸化式を利用したほうが簡単です。
漸化式より
よって
との最大公約数は2です。
おや・・・との最大公約数と同じ2になりましたね。
ひょっとしたらnに依存せず最大公約数は2になるのではないでしょうか。
この予想を確かめるためとの最大公約数を求めます。
以下、最大公約数を簡潔に表記するため記号を導入します。
2つの自然数a,b の最大公約数を
(a,b)
とすることとします。
よって
です。
どうやら予想は正しそうです。
ただ以降のは数が大きくなって素因数分解が大変そうです。
素因数分解以外の方法で最大公約数を求められないでしょうか。
ここまでの調査より
と書けます。
この2数の最大公約数が連鎖していく形どこかで見覚えがありませんか。
そう、ユークリッドの互除法ですね。
A=QB+R(A,B,Qは非負整数、Rは0≦R≦B-1を満たす整数)
のとき
(A,B)=(B,R)
というアレです。
にこのような関係式があれば互除法が適用できそうだと考えて式を探すと
ありますね。漸化式が。
を
をで割った商が4、余りが
とみなすことができれば(☆)
互除法より
となっての最大公約数が2と求まります。
このみなし方は正しいのでしょうか。
互除法を見ると余りRの部分に制約がありますよね。
余りRは割る数Bよりも小さいという制約です。
漸化式において割る数は,余りはとしたのでした。
ここですべての自然数nについてが言えれば制約が満たされみなし方(☆)の正しさが保証されます。
(3)よりは自然数です。
ゆえにn≧2のとき,
これとより、すべての自然数についてが言えました。
これで(☆)が正当化されました。
(4)が解けました。
解答の骨格
1.が増加列であること示す
2.漸化式に互除法を適用する
3.漸化式を繰り返し用いる
解答例
(3)よりすべての自然数については自然数だから(2)の漸化式よりのとき
(1)より
よってすべての自然数について・・・①
2つの自然数の最大公約数をと表す
①より
にユークリッドの互除法が適用できるから
・・・②
②を繰り返し用いて
よって求める最大公約数はである・・・(答)
まとめポイント
・2数の最大公約数を求める場合、素因数分解による方法とユークリッドの互除法による方法が考えられます。本問の場合、漸化式が互除法が適用できる形で与えられているため互除法がよいでしょう。
(のような形だったら互除法が適用できません)
・最大公約数の記号は
と書きます。(Greatest Common Divisor)の略です。
面倒くさい場合は単に()と表してよいでしょう。
いずれにせよ問題文で与えられていない記号を用いる場合には必ず答案上で記号を定義してください。
答案上で未定義の記号が現れると採点者には理解不能です。
採点者の忖度を期待してはいけません。
最悪の場合0点となります。
・互除法の適用に際して数列{a_n}が増加数列すなわち
を示したほうが確実です。
というのも数列{a_n}の項の大小関係が不明だと
においてと解釈する余地が出てきてしまうためです。
とすると
(は自然数、はを満たす整数)
とおけます
このとき
となりこれに互除法を適用することになって
となってしまいが求まりません。
これでは漸化式を繰り返し用いるという操作ができません。
つまり
となるについて
となりを求める過程の連鎖が途中で途切れることになります。
からまで降下していくからこそとの最大公約数が2だと結論できることを確認してください。
「(1)から(3)まででが増加数列となることは当たり前だ(だから書かなくてもよい)」
と感じる人がほとんどでしょうが、その当たり前のことを書くだけでこのような不条理が避けられるのですから書いたほうが安全です。
・思考過程で示したように求める最大公約数は2だと予想できます。
さらに漸化式が与えられていることから数学的帰納法を利用した解答が考えられます。
別解として示しておきます。
別解
との最大公約数がであることを数学的帰納法で示す。
Ⅰ.より
との最大公約数はである
Ⅱ. のとき,との最大公約数をと仮定すると・・・(☆)
(は互いに素) とおける
(2)の漸化式より
とが互いに素でないとすると以上の公約数が存在して・・・(★)
(は自然数) と書ける
このとき,
となり,はの約数
よりはの約数でもある
ゆえにはとの以上の公約数となるがこれはとは互いに素であることに反する。
よってとは互いに素
よりのとき
との最大公約数はである
Ⅰ.Ⅱ.よりすべての自然数について
との最大公約数はである
(別解終わり)
注1.帰納法の仮定(☆)と背理法の仮定(★)を混同しないようにしてください。
矛盾によって否定されるのは(★)であって(☆)ではありません。
注2.最大公約数を2と仮定したときの
におけるは互いに素です。
を単に自然数としてはいけません。
単に自然数としたのではが公約数をもつ可能性が生じるため仮定した値2が最大公約数と言い切れくなります。
一般に2つの自然数についてその最大公約数をとすると
(は互いに素)
とおけます。
この置き方の使い方としては
2以上の最大公約数を仮定してそれを否定することで2数が互いに素であることの証明に利用すことがほとんどです。
このときが互いに素であることから矛盾を導きます。
別解の流れがまさに典型例です・
置き方だけでなく解答の流れを意識して理解してください。
最後に
(1)(2)(3)は簡単です。
定期テストレベルです。
(4)も漸化式からすぐに互除法の適用を思いついた人が多かったでしょう。
(思考過程にあるように私はすぐには思いつきませんでした。
第一手に素因数分解を選択したことは本問の場合、悪手です。)
互除法の適用に際してが増加数列であることを答案上で明示するかどうかでは判断が分かれるところです。
巷に出回ってる解答例の大部分がが増加数列であることをを示さずに互除法を適用しています。
まとめポイントで示したように私はが増加数列であることを明示すべきと考えますが世間はそうではないようです。
開示された成績が軒並み高得点であることから察すると東大はそこまで厳密な解答は要求していないように思えます。
ですからが増加数列であることを明示せずに互除法を適用してもおそらく減点されていないでしょう。
それでも平素の学習では適用しようとしている定理の成立条件を確認することをオススメします。
補講 素因数分解を利用した最大公約数の求め方
・素因数分解を利用して2数の最大公約数を求める方法を確認しておきます。
中学(小学校?)で学んだことなので忘れている人が多いです。
公約数とは2つ以上の数の共通の約数です。
約数とは数自身を割り切る数です。
素因数分解した形において約数は
各素因数のべき乗の積として現れます。
このとき、各素因数についてべき乗が0を下限とし、素因数分解の指数を上限として自由にとれることに注意してください。
(は素数、は非負整数)とします。
Aの約数は
・・・①
となります。
(ここから約数の個数はの組の個数と同じことがわかります。
つまりAの約数の個数は個です。)
具体例で示せば
のとき
はAの約数です。
同様にBの約数は
・・・②
となります。
公約数とはA,Bの共通の約数です。
①と②が同じ形になれば共通の約数といえます。
Ⅰ. Aの素因数Bの素因数のような一方の数にしか含まれない素因数は同じ形になりようがないのでそのべき乗の指数は0です。
Ⅱ. A,B共通の素因数については素因数分解の指数の大小が関係します。
素因数の指数のときを考えてみます。
このとき、 となる非負整数cが存在します。
Aの約数
は公約数になれるでしょうか?
Bは
で素因数を個持っています。
よりdでBを割るとが個余ってしまいます。
当然ながらこの余ったは以外の素因数を割ることはできません。
(素数の定義を思い出してください)
よってdはBを割り切ることができないのでdは公約数となれません。
このことからAの約数①で公約数となれるのは
の形をしたものでありAとBをの指数で比べたとき大きくないほうの指数に上限が制約されることがわかります。
以外の素因数についても話は同じです。
具体的に考えてみましょう.として
のときA,Bの公約数は
の形をした1,2,3,4,6,12です。
Ⅰ・Ⅱを合わせて考えると
dがAとBの公約数となること(AとBの両方を割り切ること)の必要十分条件は
「dがA,Bの各素因数の指数の大きくないほうを上限としたべき乗の積となること」・・・(☆)
です。
2つの自然数a,bのうち、大きくないほうを
とします。
(大きくないほうとしているのは同じ場合を含むためです)
例
(は素数、は非負整数)
の公約数をdとすると(☆)は式では
となります。
例1
とするとAとBの公約数dは
となります。
ここからAとBの「最大」公約数がわかりますね。
(☆)において各素因数の指数を上限にとったときです。
例1でいえば
がAとBの最大公約数です。
結局、2数の最大公約数は
「2数の各素因数の指数の大きくないほうをとったべき乗の積」
となります。
(は素数、は非負整数)
の例では
です。
基本的事項なのでセンター試験でよく聞かれます。
2次試験でも論述の前提として必要になります。
忘れていた人はこの機会に確認しておいてください。