今回は2017年東京大学数学理系第5問を解いていきます。
問題はこちら
を実数とし,座標平面上で次の2つの放物線の共通接線について考える。
(1) 直線が共通接線であるとき,を用いてとを表せ。
ただしとする。
(2) 傾きが2の共通接線が存在するようにの値を定める。
このとき,共通接線が3本存在することを示し,それらの傾きと切片を求めよ。
(2017 東京大学 理科 第5問)
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(1)思考過程
共通接線に関する問題です。
接線の求め方としては導関数を利用する方法もありますが
放物線の接線なので重解条件を利用するのがよさそうです。
をの式に代入して
「とが接する」⇔「が重解を持つ」
ですから
の判別式
・・・①
の場合も同様にして
重解条件より
・・・②
を用いてを表せとのことですから
①,②をの連立方程式とみなして解きます。
①×a-②を作るとが消えるのでよさそうですががのとき意味がないのでがの場合を調べておきます。
のとき,②がとなって成立しません。
よっては重解条件を満たしませんのでの接線となりません。
(図形的に考えるとより明らかです)
のもとで①×a-②より
より
がで表せました。これを①に代入して
これで(1)が解けました。
解答の骨格
1.とを連立させて重解条件を得る
2.とを連立させて重解条件を得る
3.1.2.をとについて解く
解答例
直線をとする
とが接するとき
は重解を持つので
・・・①
とすると,は軸に平行となり軸を軸とする放物線と接することができない。
よってである
とが接するとき
は重解を持つので
・・・②
①×a-②より
より
・・・③
③を①に代入して
以上より
・・・(答)
まとめポイント
・放物線のとを入れ替えると放物線の式になるので
放物線と放物線はについて対称です。
・のとき,となり軸に平行な直線となります。
これがと接するのはの頂点においてです。
(図形的に明らかですが、式で確認するとの導関数がとなるのはのときです)
よってとなります。
の接線はと必ず交わります。
よってが共通接線となるとき、です。
・を示した後、をについて解いて
として放物線との連立を考えるとちょっと計算がラクになります。
①において
としたものが②です。
(2)思考過程
共通接線の傾きがなのですから(1)で求めたで表されたにを代入してみましょう。
すると
となります。
の値が確定したので放物線の形も決定されます。
あとはのとき、以外のの値が2つ定まれば共通接線が3つ存在することになります。
ここで、とが直線について対称であることを考えると
共通接線の1つである
のについて対称な直線
も共通接線となります。
式で確認すると(1)のにを代入して
のときも共通接線となることが確認できました。
あれ?のとき、の値が2つしか出てきません。
うーん・・・どうしたものでしょう。
図形的に考えると対称軸であるについて線対称な直線の傾き-1がの値になると考えられますが(1)ではとなっています。
・・・困りました。
・・・
・・・・・・
・・・なんでとしているのでしょう?
(1)でを求める計算過程を見ると
から両辺をで割るのにを用いています。
つまり(1)で求めたはのときの値でそこから導かれるの値ものときの値です。
(1)で求めたにを代入することはできません。
そこで(1)で求めたの大元の式である①,②にを代入してみると
①,②ともに
・・・③
となります。
結局この同型の式③となるのを回避するためにとしているのでした。
よく考えてみればとしているのは(1)のときだけであって(2)の場合にこの制限が及ばないことに気付くべきでした。
③にを代入すると
となってのときの切片が求まります。
これでのときのの値が3つ定まりました。
あとは各々のの値に応じたの値を求めれば終わりです。
を(1)のに代入して
のときは
これで共通接線の傾きと切片の組が3つ得られ
のときのとき共通接線が3本存在することが示せました。
(2)が解けました。
解答の骨格
1.(1)のにを代入しての値を確定させる
2.1.で求めたの値に対応するの組を3つ求める
解答例
にを代入すると
を①,②に代入して
・・・①’
・・・②’
①’より
・・・④
④を②’に代入して
これらのを④に代入して
以上よりのとき、共通接線の傾きと切片の組
がを含めて3組存在する。
よって共通接線は3本存在し、その傾きと切片は
・・・(答)
まとめポイント
・
です。はであるための必要条件です。
つまりのときに傾きが2となる共通接線が存在します。
これを
と解釈してのときのが2に限られるとする間違いが見受けられるので注意してください。
・のときの以外のの値を2つ見つけることを考えます。
問題文の「このとき」とはのときのことです。
・を(1)で求めたkの式に代入するとについての2次方程式となり、の値が2つしか求まりません。
私のように(1)のの制限が(2)にも及んでると解釈してしまうとハマる危険性があります。
(1)で求めたの値がのときの値であることに注意するとのときの値はどうなるかに考えが及ぶかと思います。
この点に気が付くとハマりから脱出できます。
ただのときであってもはです。
を(1)のに代入して
としないようにしてください。
・の条件が2つの重解条件を連立する過程で使われていることに注意すると
重解条件を連立する前ではの場合を含んでいることがわかります。
そこで解答例ではを(1)のではなく重解条件のに代入することで
の場合もまとめて求めることにしています。
重解条件にを代入して連立したについての方程式がの3次方程式となってが高々3つ存在することを示唆してくれています。
あとはこの3次方程式が相異なる3つの解をもてばめでたく共通接線の傾きが3つ存在することになります。
を解にもつのはわかりますから因数分解も容易にできて解決となります。
最後に
(1)はなんてことないでしょう
(2)で私のように問題文を読み誤るとハマります。
の値が3つ欲しいのに2つしか出てこないといった風に不都合が生じたら
条件に見落としはないか・問題文の読み間違いがないか確認しましょう。
試験本番ではハマりからの脱出速度が点数を大きく左右します。
恥ずかしい話、私が今年の東大数学でもっとも苦戦した箇所がここです。
としているのは(1)のときだけであって(2)の場合にこの制限が及ばないことに気付くのに10分近くかかってしまいました。
賢明なみなさんなら大丈夫でしょうが、私のようなアホなことをしないように気を付けましょう。