夏休み中に基礎力チェック! 2017 センター試験数学ⅡB第4問を解こう

8月になりました。受検勉強ははかどっていますか?

今回は何事も基本が大事!
ということで初心に帰って(?)今年のセンター試験の問題を解いていきます。

センター試験は言わずと知れた国立大学受験の前哨戦です。
またその性質上、基本的学力の判定を目的としています。

つまりセンターの問題が解けるか否かで基礎力の有無がわかります。
今年のセンター数学で70点未満の人は基礎力に問題があります
ぜひとも夏休みの間に基礎力のチェックを行ってください。

今回はセンター数学70点の届かなかった人向けにいつもより基礎的な解説が多くなります。
ご了承ください。

では、始めましょう。まずは第4問のベクトルから
問題はこちら
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(1) 思考過程

半径 2 の円に内接する正六角形の頂点の座標を求める問題です.
図1
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半径 2 の円周上の点は x 軸から測った一般角 θ を用いて

(2\cosθ\ ,\ 2\sinθ)・・・(☆)

と表せます.


また,正 n 角形の中心と隣り合う頂点のなす角は

\displaystyle \frac{2π}{n}・・・(★)

です.

正六角形の場合は

\displaystyle \frac{2π}{6}

となって各頂点の対称性がわかります.


よってBの座標は

\displaystyle B\ (\ 2\cos\frac{2π}{6}\ ,\ 2\sin\frac{2π}{6})\\\displaystyle
=(\ 2\cos\frac{π}{3}\ ,\ 2\sin\frac{π}{3}\ )\\
=(\ 1\ ,\ \sqrt{3}\ )

Dは y 軸に関してAと対称だから

D\ (-2\ ,\ 0\ )

(1) はこれでおしまいです.

(1) ポイント

ベクトルの問題なのにいきなり座標を尋ねられて戸惑った人もいるのではないでしょうか.


(☆)はすぐ頭に浮かびましたか?

\cosθ\sinθ は円の x 座標,y 座標だから \displaystyle \ (\cos\frac{2π}{6}\ ,\ \sin\frac{2π}{6}) っと」・・・①
とか

「半径 2 の円なら x^2+y^2=4 だな これと y=\sqrt{3}x の交点を求めて・・・」・・・②
とかやる人がいるので困ります.


このような人は三角関数の定義の理解が不十分です.

①のように考える人は (x,y)=(\cosθ\ ,\ \sinθ) が単位円上で定義されていることに注意しましょう

この定義は半径1のときに通用するものです.

教科書を確認しましょう.

単位円での定義の前に

半径 r の円周上の点 ( x , y) を用いた定義が書いてあります.


原点を中心とする半径 r の円周上の点P (x,y) について x 軸とOPのなす角が θ のとき

\displaystyle \frac{y}{r},\frac{x}{r},\frac{y}{x}

の各値が

半径 r に無関係で角 θ によってのみ定まる

よってこれらの値はθ の関数になるという意味で

\sinθ\ ,\ \cosθ\ ,\ \tanθ

と定義します(三角関数

つまり

\displaystyle \sinθ=\frac{y}{r}\ ,\ \cosθ=\frac{x}{r}\ ,\ \tanθ=\frac{y}{x}

ということです ここから半径 r の円上の点P (x,y) の座標は次のようになります.

x=r\cosθ\ ,\ y=r\sinθ

r=1 とすれば

x=\cosθ\ ,\ y=\sinθ

単位円上での定義と一致します.

下線部はどの教科書にも書いてある記述です.

円周上の点の x 座標( y 座標)と半径の比(太字)は半径に依存しないという意味です

図2
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図の相似比 1:r の2つの三角形において斜辺(半径)と符号付き長さ(座標)の比が一致するということです(相似な三角形だから当たり前ですね)

この下線部の「半径 r に無関係」という記述を「三角関数の定義に r が現れない」と誤読している人がいます.

このように誤解すると

x=\cosθ\ ,\ y=\sinθr が現れていない)が三角関数の定義だ!!」

と思い込み①のようなミスを犯すわけです.


②のように考えた人はもっと事態が深刻です.

まず y=\sqrt{3}x としているということは動径のなす角は \displaystyle \frac{π}{3} ときちんととらえられているわけです.

にもかかわらず円周上の点を求めるのにわざわざ円の方程式と直線の方程式を持ち出して連立させようとする発想がマズいのです

「半径 2 で角 \displaystyle \frac{π}{3} なら \displaystyle (\ 2\cos\frac{π}{3}\ ,\ 2\sin\frac{π}{3}\ ) に決まってんじゃん」

三角関数が円周上の点を用いて定義されていることを知っていればこのようにパッと思いつくわけです.

つまり,②のように考える人は三角関数の定義を知らない(理解していない)疑義が生じるわけです.

①のように考える人は三角関数が円周上の点を用いて定義されていることはまだ理解できているので傷は浅いです.
(半径は忘れていますが)

「②だと答はでるじゃん 何がいけないの?」

とのたまう人がいらっしゃるのですが定義を利用した解答と比べて明らかに遠回りですよね?

制限時間の厳しいセンター試験でこのような迂遠な方法は取っていられないわけです.

そもそも正解を出せたからといって定義を疎かにしたままにすると応用問題で必ずつまずきます.

数学の成績が伸びない人によく見られる現象です.

①②のように考えた人は秋以降の本格的な演習に備えて夏のうちに定義の確認を行ってください.


・(★)にもすぐ気が付きましたか?

半径を動径として \displaystyle \frac{2π}{n} ずつ回転させていけば円周が n 等分されます.

n 等分された点を結んでいけば正 n 角形のできあがりです.

よって正 n 角形は円に内接します.

(★)は理系なら複素数の回転の経験があるからすぐにピンとくるのですが文系の人ですぐにはわからない人がいます.

(★)に気が付かなかった人はこの機に理解しておきましょう.


(1)は正直問題を読んだ瞬間に手が動いてほしい設問です.
(1)に30秒以上時間がかかった人は実力不足です.
精進しましょう.
この程度の問題に時間をかけるとセンターの高得点が難しくなります.

(2) 思考過程

2 直線の交点を求める問題.
図3
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BDの中点Mを求めないことには直線AMの方向が定まりません.

まずはMを求めましょう.

以下,簡略化のため \overrightarrow{OX}OX のように略記します.


\displaystyle OM=\frac{1}{2}(\ OB+OD\ )\\\displaystyle =\frac{1}{2}{(\ 1\ ,\ \sqrt{3}\ )+(-2\ ,\ 0\ )}\\\displaystyle =\frac{1}{2}(\ -1\ ,\ \sqrt3\      )\\\displaystyle =(-\frac{1}{2}\ ,\ \frac{\sqrt{3}}{2}\ )

これで AM が求められます.

AM=OM-OA\\\displaystyle =(-\frac{1}{2}\ ,\ \frac{\sqrt{3}}{2})-(\ 2\ ,\ 0\ )\\\displaystyle =(\ -\frac{5}{2}\ ,\ \frac{\sqrt{3}}{2}\ )

次に DC を求めますが C の座標がわかっていません.

正六角形の対称性より

C は y 軸に関して B と対称になりますから

C\ (\ -1\ ,\ \sqrt{3}\ )

となります.

DC=OC-OD\\=(-1\ ,\ \sqrt{3}\ )-(-2\ ,\ 0\ )\ \\=(\ 1\ ,\ \sqrt{3}\ )

これで AM , DC が求まりました.

問題の指示通り ON を 2 通りに表します.

2 通りに表したところで同じベクトルを指しているのですから成分は一致します.

OA+rAM=OD+sDC

\displaystyle (\ 2\ ,\ 0\ )+r\ (-\frac{5}{2}\ ,\ \frac{\sqrt{3}}{2}\ )=(-2\ ,\ 0\ )+s\ (\ 1\ ,\ \sqrt{3}\ )


x 成分 ,y 成分それぞれについてみると


\displaystyle 2-\frac{5}{2}r=-2+s・・・①
\displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2}r=\sqrt{3}\ s・・・②

②より

r=2s

これを①に代入して

\displaystyle s=\frac{2}{3}

よって

\displaystyle r=\frac{4}{3}

ON=OD+sDC\\\displaystyle =(-2\ ,\ 0\ )+\frac{2}{3}(\ 1\ ,\ \sqrt{3}\ )=(-\frac{4}{3}\ ,\ \frac{2\sqrt{3}}{3})

これで (2) が解けました.


(2) ポイント

・ベクトルの演算を確認しましょう.

2 点を結ぶベクトルはその 2 点以外の点を基準点としたベクトルの差に分解されます.

AM=OM-OA

としてA,Mを結ぶベクトルを O を基準点としたベクトルの差に分解しています.

座標平面上では原点 O を基準とした位置ベクトルの成分と座標が一致します.

O を始点とするベクトルの成分計算は座標で行えるようになります.

そのため O を始点としないベクトルの成分は O を始点とするベクトルの差に分解することで座標の差として求められるようになります.


直線は通る 1 点と方向ベクトルがわかれば表すことができます.

本問の場合
A , D が通る 1 点

AM , DC が方向ベクトル
です.

どうやって直線を表すかというとベクトルの和と実数倍を用います.
図4
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まず O から A に向かいます.( ① )

次に A から方向ベクトルに沿った点へ向かいます.( ② )

このとき方向ベクトルを実数倍 ( 問題に合わせて r とする )します.

実数倍することは方向ベクトルの長さを基準とした任意の長さを表すことを意味します.

最後にベクトルの和( ①+② )をとると A を通って方向ベクトルに平行な直線上の点へ O から向かうベクトルとなります.

r の値を変えることで方向ベクトルの長さが調整され直線上の任意の点が得られます.
つまり,r はパラメータとなります.

センター試験でベクトルの演算を行う際は略記を心がけましょう.

私はベクトルの矢印→を書きません.

(思考過程中の演算でも省略しています)
矢印を書いてる時間がもったいないです.

ベクトルの始点が統一されているときは終点の文字だけで表すこともあります.

AB=b\ ,\ AC=c


センター試験は時間制約が厳しいのでみなさんも自分なりの略記法を考案し,時間短縮や計算ミス防止を図ってください.


(3) 思考過程

線がいっぱい現れてごちゃごちゃします.

(2)とは別に新たに図を描きましょう.
図5
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図からわかるように線分BFは x=1 上にあります.

よって P の x 座標は 1 です

P\ (\ 1\ ,\ a\ )

となります.

あとは E の座標がわかれば EP の成分はわかります.

E は x 軸について C と対称ですから

E\ (-1\ ,-\sqrt{3}\ )

となります. よって

EP=OP-OE\\=(\ 1\ ,\ a\ )-(-1,-\sqrt{3}\ )\\=(\ 2\ ,\ a+\sqrt{3}\ )

次はまたもや 2 直線の交点である H を求める問題です.

さて (2) と同じくパラメータを用いて解くのでしょうか.

パラメータを 2 つ設定するのは面倒です.

まだ使っていない条件がありますね.

H は垂線上の点という条件です.

ベクトルの問題で垂線,すなわち直角に関する条件が現れたら十中八九

内積=0

の関係式を使うと相場が決まっています.

直線 CH と直線 EP は直交しますから

CH\cdot EP=0・・・①

です

EP はすでにわかっています.

あとは CH がわかれば①の関係式が使えます.

C の座標はわかっていますから H の座標がわかれば CH の成分は求まります.

さて H は P から y 軸に平行な直線 CE に引いた垂線上の点ですから
H の y 座標は P と同じです

H の x 座標はわからないので x とでもおきましょう

H\ (\ x\ ,\ a\ )

とおきます.

このようにおいても①の関係式に現れるのは x , a の 2 文字のみですから文字 x について解けば xa で表すことができます.
(設問の要求を確認しましょう. H の座標を a を用いて表せとしています)

CH=(\ x\ ,\ a\ )-(-1\ ,\sqrt{3}\ )=(\ x+1\ ,\ a-\sqrt{3}\ )

となるので①より

CH\cdot EP=0\\⇔(\ x+1\ ,\ a-\sqrt{3}\ )\cdot(\ 2\ ,\  a+\sqrt3\ )=0\\⇔2\ (\ x+1\ )+a^2-3=0\\\displaystyle ⇔x=-a^2+\frac{1}{2}

これでHの座標が求まりました.

\displaystyle H\ (\frac{-a^2+1}{2}\ ,\ a\ )

です.

最後はOPとOHのなす角の条件から a を求める問題です.

\cos の形で角が与えられていて内積の定義式を利用しろと言わんばかりの誘導があります.

\displaystyle OP・OH=(\ 1\ ,\ a\ )\cdot(\frac{-a^2+1}{2}\ ,\ a\ )\\\displaystyle =\frac{-a^2+1}{2}+a^2\\\displaystyle =\frac{a^2+1}{2}

|OP|=\sqrt{a^2+1}

\displaystyle |OH|^2=\{\frac{-a^2+1}{2}\}^2+a^2\\\displaystyle =\frac{a^4+2a^2+1}{4}\\\displaystyle =\left(\frac{a^2+1}{2}\right)^2

\displaystyle |OH|=\frac{a^2+1}{2}

\displaystyle \cosθ=\frac{12}{13} より

\displaystyle \cosθ=\frac{OP\cdot OH}{|OP||OH|}\\\displaystyle ⇔\frac{12}{13}=\frac{\frac{a^2+1}{2}}{\sqrt{a^2+1}(\frac{a^2+1}{2})}\\\displaystyle ⇔\sqrt{a^2+1}=\frac{13}{12}

両辺を2乗し整理して

\displaystyle a^2=\frac{25}{144}\\\displaystyle =\left(\frac{5}{12}\right)^2

よって a は

\displaystyle a=\pm\frac{5}{12}

となります.

これで (3) はおしまいです.


(3) ポイント

・交点Hを (2) と同じようにパラメータを 2 つ設定して解こうとした人はいませんか?

(2) でパラメータが 2つあっても交点を簡単に求められたのは方向ベクトルが文字を含まない定ベクトルとしてわかっていたからです.

同じ考えで交点を求めようとするとCHの方向ベクトルが必要となるはずです.

CHの方向ベクトルを求めるには結局Hの座標が必要となります.

ですから,最初からHの座標を設定しましょう.


・Hの座標を設定するとき問題文に与えられていない文字を自分でおくことになります.

問題文にない文字を設定することや文字が増えることに抵抗感を覚える人がいます.

思考過程にあるように関係式に現れる文字数を把握して後の流れがどのようになるか考えれば未知数の設定をためらう必要はないはずです.

つねに先の展開がどうなるかを考える癖をつけましょう.


最後に

今年のセンター試験のベクトルは例年よりもボリュームが少なくやりやすいと感じた人が多かったのではないでしょうか.

この内容・分量なら10分程度で完答したいところです.