2017年 東京大学 数学 理系 第1問 を解こう

いよいよ夏休みに入りましたね。
受験生の皆さんはここが正念場です。
夏休み中の学力の伸びが合否に直結します。

照りつける太陽に負けず頑張りましょう。

今回は2017年 東京大学 数学 理系 第1問 を解いていきます。
問題はこちら


実数 a,b に対して

f(θ)=cos3θ+cos2θ+cosθ

とし, 0<θ<π で定義された関数

\displaystyle g(θ)=\frac{f(θ)-f(0)}{cosθ-1}

を考える。

(1) f(θ)g(θ) をの整式で表せ。

(2) g(θ)0<θ<π の範囲で最小値 0 をとるための a, b についての条件を求めよ。

また, 条件をみたす点 (a,b) が描く図形を座標平面上に図示せよ。

(2017 東京大学 理科 第1問)

スポンサーリンク



思考過程

f(θ),g(θ)x=cosθを用いてθをxに変数置換せよという要求です。

f(θ)がcosの項のみで構成されているので倍角公式を使ってcosθのみから成る式にしましょう。


f(θ)=cos3θ+acos2θ+bcosθ\\
 =c(2θ+θ)+acos2θ+bcosθ\\
 =cos2θcosθ-sin2θsinθ+acos2θ+bcosθ\\
 =(a+cosθ)cos2θ--2sinθ^2cosθ+bcosθ\\
 =(a+cosθ)(2cosθ^2-1)-2(1-cosθ^2)cosθ+bcosθ\\
 =4cosθ^3+2acosθ^2+(b-3)cosθ-a


x=cosθとして
f=4x^2+2ax^2+(b-3)x-a


続いてg(θ)の式を見るといかにもf(θ)-f(0)がx-1を因数にもってそうな形をしています。
f(0)=cos0+acos0+bcos0=a+b+1ですから
f(θ)-f(0)にx=1代入するとf(θ)-f(0)=0となってめでたくf(θ)-f(0)がx-1を因数にもつことがわかります。
f(θ)-f(0)=(x-1)\{4x^2+(2a+4)+2a+b+1\}
ですから
\displaystyle g=\frac{f(θ)-f(0)}{x-1}=4x^2+(2a+4)+2a+b+1


となります。
これで(1)が解けました。
計算するのみなので解答例は省略します。

( 2 ) 思考過程

(1)よりg(θ)はxの2次関数となります。


0<θ<πのとき
x=cosθのもとで
θとxは1対1に対応し
-1<x<1
となります。


定義域-1<x<1のもとで
下に凸な2次関数g(θ)が最小値をもつ条件は


g(θ)の軸が定義域内にある


ことです。
軸が定義域外にあると定義域内でg(θ)は単調増加または単調現象することになります。
定義域の端点が含まれないので
端点の値f(-1)またはf(1)が最小値となることはありません。
よって最小値が存在しないことになります。

①のもとでは頂点のy座標が最小値となります。
ですから


② g(θ)の頂点のy座標=0


が題意を満たすための条件です。

①かつ②が求める条件です。

\displaystyle g=4(x+\frac{a+2}{4})^2-\frac{1}{4}a^2+a+b

と平方完成されますから


軸:\displaystyle x=-\frac{(a+2)}{4}


頂点のy座標:\displaystyle -\frac{1}{4}a^2+a+b


となります。

①⇔\displaystyle -1<-\frac{(a+2)}{4}<1\\
⇔-6<a<2


②⇔\displaystyle -\frac{1}{4}a^2+a+b=0\\
⇔\displaystyle b=\frac{1}{4}a^2-a


これで①かつ②が求まりました。
これを図示すれば解答になります。

解答の骨格

1.g(θ)の定義域を確認してg(θ)が最小値を持つ条件(①)を求める
2.最小値が0となる条件を求める(②)
3.①かつ②からa,bの関係式を求めて図示する

解答例

(1)より
g(θ)=4x^2+(2a+4)+2a+b+1\\
\displaystyle =4(x+\frac{a+2}{4})^2-\frac{1}{4}a^2+a+b


0<θ<πより-1<x<1


g(θ)-1<x<1の範囲で最小値0をとる条件は
\displaystyle -1<-\frac{(a+2)}{4}<1・・・①


かつ


\displaystyle -\frac{1}{4}a^2+a+b=0・・・②


①より
-6<a<2


②より
\displaystyle b=\frac{1}{4}a^2-a


よって
\displaystyle b=\frac{1}{4}a^2-a(-6<a<2)
が求める条件でこれを図示すると下図になる
f:id:tarumaru:20170723090013p:plain

まとめポイント

定義域の端点が含まれないので最小値が存在しない場合があります
定義域があれば常に最小値が存在すると勘違いしている人がいるので気をつけましょう。


・最少値の条件を並列的に考えるのではなく思考過程にあるように段階的に考えるようにしましょう。
最小値は存在するのか?→存在するとしてその値が0になる条件は何か?
といった具合です。
このように考えていくと条件の見落としが防げます。

最後に

(1)は倍角の公式を覚えていますか?3倍角に応用できますか?を尋ねているだけの問題です。
大受験生なら3倍角の公式を覚えている人も多いでしょう。
計算ミスだけが怖い問題です。
ただ試験本番では緊張からこういった単純な計算でもミスしがちです。
普段の勉強から計算を手を抜かずに実行し緊張に負けない着実な計算力を身につけましょう。


(2)は2次関数の最小値の条件を求める問題です。
センター試験にありがちな問題だからと油断して最小値の条件を
頂点のy座標=0またはg(-1)=0またはg(1)=0
などと機械的に求めると失敗します。
簡単な問題に見えてもちゃんと考えて答を出すようにしましょう。


東大の1番は例年簡単な問題が多いのですが今年も御多分に漏れず簡単でした。
こういう簡単な問題こそ差が付きます。
易問も難問も配点は同じなのですから上に述べたミスをすることなく確実に得点を稼ぎましょう。